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2023.08.07
保護犬から華麗に転身!NZの麻薬探知犬サービスとは?~南半球のDog's letter~
世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?共通してる?目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。
ニュージーランドでは、たくさんの犬たちが素晴らしい能力を生かして人々の暮らしのサポートをしてくれています。今回はそんな「働く犬たち」の中から、嗅覚を活かして活躍する「麻薬探知犬」をご紹介します。ニュージーランドの麻薬探知犬の中には、保護犬出身の犬たちも多く活躍しているそうです。
イキイキと働く犬たちの姿をぜひご覧ください。
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この記事を書いた人:グルービー美子
ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。
保護犬のみを採用する麻薬探知犬サービス会社
農業大国のニュージーランドは動植物検疫審査が厳しいことで有名。
国際空港では、キビキビと働く探知犬の姿が見られます。
また、のどかなイメージとは裏腹に薬物の問題も深刻で、建設現場や企業などで定期的に麻薬検査が行われるため、麻薬探知犬も多数活躍しています。
今回は、民間の麻薬探知犬サービス会社「NZディテクター・ドッグス」を取材。
ここは、在籍する麻薬探知犬すべてが保護犬出身という画期的な会社です。
代表のジャネット・ウィリアムさんに、設立の経緯や業務内容について話を伺いました。
雑種の保護犬でもビーグル並みに活躍できる
NZディテクター・ドッグス社が設立されたのは2009年。
現在では北島・南島の両方にオフィスを構え、幅広いエリアで事業を展開しています。
創業当初からのモットーは「麻薬探知犬として採用するのは保護犬のみ」「犬たちには楽しんで働いてもらう」の2つだと話すジャネットさん。
会社を立ち上げる前は空港検疫所で探知犬プログラムを担当していたそうです。
「空港の検疫探知犬はほとんどがビーグルで、主に専門のブリーダーからやってきた子たちでした。しかし、稀に保護施設から引き取ってきた犬や雑種犬が採用されることがあり、彼らが非常に優秀だったので、ブリーダーや犬種にこだわる必要はないのではと思うようになりました」
以降、組織の上層部に保護犬を積極的に採用するよう働きかけたと振り返るジャネットさん。
しかし個人の力ではなかなか改革を進めることができずに悩んだといいます。
「あまり期待されることのない保護犬でも、訓練次第で純血のビーグルに負けないほど仕事ができるようになる――そのことを政府機関や一般市民に知ってほしいと考え、独立することに決めました」
保護犬が麻薬探知犬になるための訓練とは?
保護犬が麻薬探知犬になるための訓練は通常より難しいのでしょうか?
そうジャネットさんに尋ねると「ある意味難しいけれど、視点を変えるとメリットもある」とのこと。
同社にやってくる保護犬は大半が生後10~12カ月以上のため、5~6カ月の子犬を訓練するのに比べるとやや時間と忍耐が必要だと話してくれました。
「一方、利点といえるのがブリーダーから子犬を迎えるよりも経済的で、かつ才能がある子を見極めて選択できること。私たちは保護犬を選ぶ際、犬種ではなく麻薬探知犬の素質の有無を見ます。それでも訓練を始めると各犬が抱える問題が表面化することもあります。ハンドラーはそれにどう対処するかを学べるので、人間のスキルアップにつながるのもよい点です」
訓練時間は極力短く、こまめに休憩を挟んで犬が飽きずに続けられるよう心がけているのも同社のスタイル。
約6~8週間の訓練を経て、麻薬探知犬としてデビューします。
仕事を離れると普通の“うちの子“に
同社の麻薬探知犬は、すべてハンドラーのもとで家族として暮らしています。
そのため、仕事を離れると広い公園を走り回ったり、水に飛び込んで遊んだりと、幸せな“うちの子”の生活を満喫している様子。
平均引退年齢は9歳ですが、犬が望む限り仕事を続け、10歳以上のシニアになっても活躍している子もいるのだとか。
引退後はそのままハンドラー宅で家庭犬となるか、新しい家族に引き取られます。
同社のクライアントは何度も顔を合わせるうちに麻薬探知犬の虜になり、「引退後はぜひ我が家に」と里親を希望する人が少なくないそう。
ニュージーランドの麻薬探知犬は、ライフ・ワーク・バランスを実現しているといえるでしょう。
ほかにも続々、働く犬たち