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2024.11.11
「犬におやつを与える」という飼い主の行動を研究したら...犬と飼い主の幸せを考える
皆さまは犬たちにオヤツを与えていますか?
では、どうして犬にオヤツを与えているのでしょうか?
中には犬にはオヤツを与えないようにしている、病気などの理由で与えることができない、という方もいるかもしれませんが、犬にオヤツを与えることは多くの飼い主が実践していることだと思います。
「犬が喜んでくれるから」「トレーニングのご褒美として」「メリハリのある生活のため」さまざまな理由があると思います。
先日、北米では犬にオヤツを与えるという行動についての研究が行われ、その結果が発表されました。今回はいつもと違う、飼い主の心理についての研究をご紹介いたします。
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POCHI編集部
犬との暮らしをちょっと素敵に、快適に。日々、そんな情報集めに余念がない編集チームです。
犬にオヤツを与える理由は?
今回の調査は、北米で犬といっしょに暮らしている人を対象にして行われたもので、700名以上の犬と暮らす人から回答が得られた結果をまとめています。
今回の回答者のほとんどが犬にオヤツを与えたことがある、と回答していました。また、その中の40%以上の回答者が「犬への愛情表現として」オヤツを与えていると回答したのだそう。
また、回答者のうち30~40%が人間の食事の一部や食材をオヤツとして与えており、人間用の食事を与えることが犬の肥満やその他の健康への悪い影響があることを理解しながらもオヤツを与えていたのだそうです。
このあたりの数値については、日本とアメリカでは認識に違いがありそうな気がしますが、愛情表現としてオヤツを与えているという人は、私たち日本人の飼い主にもそれなりの割合を占めていそうな気がします。
また、オヤツの量についての調査も行われており、1日の食事量に対してオヤツの割合が15%程度与えているという回答者の数が最も多く、それが適量であると思っている人が多かったようです。
また、犬のオヤツの量を決めるときの基準は犬の体型を基準にしているという回答が全体の60%を占めており、43%の回答者は犬の運動強度を意識して与える量を決めていると回答したそうです。オヤツの量は飼い主が独自の判断基準で決めている
人が多く、獣医師などの専門家の意見をもとにして決めている、という回答は22%にとどまったそうです。
皆さまは、犬のオヤツの量をどのように決めていますか?そういえば、飼い主の判断で決めてしまっていたかも…と思っている方も少なくないと思います。
参考文献
*1 「Dog caregivers' perceptions, motivations, and behaviours for feeding treats: A cross sectional study」Shelby A Nielson 1, Deep K Khosa 2, Katie M Clow 2, Adronie Verbrugghe (Prev Vet Med. 2023 Aug:217:105971)
犬への愛情表現が犬の肥満の原因になっている?
今回の調査では、約半数の飼い主が犬に対する愛情表現としてオヤツを与えていることを示していましたね。一方で、犬の肥満の原因としてオヤツの与えすぎ、という問題があることもまた事実。
もしかすると犬に対する愛情表現としてオヤツを与えている…この行動や飼い主心理こそが、犬の健康寿命に影響してしまっているのかもしれない、と研究論文では触れています。
これまでにも、犬の肥満についての研究や健康維持に関する調査では、「オヤツの与えすぎ問題」が取り上げられることはありましたが、その背景にある飼い主の心理にまで踏み込んだ研究は多くなかったのではないでしょうか。
私自身、犬と接している時に「可愛いね」「いい子だね」「おりこうだね」と言いながらオヤツを与える場面が多かったように思います。これも、犬に対する愛情表現としてオヤツを与えてしまっているのかも…。
犬たちが元気でずっと過ごすためには、体重管理はとても大切。だからこそ、犬に対する「オヤツ」以外の愛情表現も適切に取り入れていく必要があるのかもしれません。
そんな犬に対する愛情表現、ひいては犬と飼い主両方に嬉しい影響をもたらしてくれる"絆ホルモン"についての研究も進んでいます。
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犬と飼い主の絆を深める「オキシトシン」
犬たちと暮らしていると、何かと私たちの顔を覗き込んできたり、目で何かを訴えようとしてきたり。視線が合うことはないでしょうか?
犬たちと良く目が合う、というのはもしかすると犬たちからの信頼の証のひとつだという研究結果が発表されています。
私たち人間と犬たちが互いに目が合う時、"幸せホルモン"や"愛情ホルモン""絆ホルモン"という異名を持つ「オキシトシン」という物質が、私たちだけでなく犬たちの体内でも大幅に増えるのだそうです。
オキシトシンは私たち人間や犬、猫などの脊椎動物の多くが持っているホルモンです。子どもを生んだ母親が母性を抱くきっかけになるほか、母乳が出るようになる作用を持つなど、親子間ではこれまででも多くの動物でこの行動とホルモンが存在していることが知られていました。
また、このホルモンには母親、子どもの両方が同じように血中濃度が上がることでストレスを軽減したり、幸福な気持ちになることも分かっていました。
このオキシトシンが、改めて注目されたのは犬たちと私たちの触れ合いを通して、人間と犬両方のオキシトシン濃度が上昇している、という実験結果が出たためです。
そして、人間と犬という異なる種の動物が互いに同じようにオキシトシンの血中濃度が上昇するケースは他に類がなく、これこそが犬たちと人間の特別な"絆"の生まれる理由なのではないか、と言われています。
犬と暮らす幸せを実感する方法を考えよう
また、人と触れ合うといっても、どんな人と犬の組み合わせでも必ずオキシトシンの血中濃度に影響が出るとは限らないようで、犬好きな人は自身の飼い犬でなくても犬と触れ合うと血中のオキシトシン濃度に変化が出た一方で、犬が好きではない人の場合は、人も犬も血中のオキシトシンの濃度に変化はなかったのだそう。興味深いことに、犬のオキシトシンの血中濃度でも同じ動きを示しました。(もちろん、大好きな飼い主さんと触れ合ったときが一番大きく変化したわけですが)
「犬は犬好きの人が分かる」なんて言われたりもしますが、この結果をみるとあながち間違いではないのかもしれませんね。
犬と触れ合って、目を合わせて「何が言いたいのかな~」と犬の気持ちになって察してみる。その繰り返しがオキシトシンを増やすなんて素敵なことですよね。
犬との暮らしは、犬とのアイコンタクトを意識的に増やして、犬も飼い主も幸せホルモンをアップさせることを意識していくと、お互いにQOLもどんどん上がっていくのかも?オヤツに頼らなくても、ちょっと照れくさい言葉にしなくても愛情を表現できる触れ合いとアイコンタクトを意識してみるのも良いのかもしれません。
おわりに
今回は、犬に対してオヤツを与えるときの飼い主の心理と、犬への愛情表現についての研究についてご紹介しました。
皆さまにとって、犬にオヤツを与える理由は何でしょうか?どんな時に犬にオヤツを与えていましたか?もしかするとそのオヤツの与え方は犬の肥満の原因になっていたかもしれません。
犬に対して愛情を伝える方法はオヤツを与えたりする以外にもあります。近年では犬と飼い主が見つめあうことで分泌される愛情ホルモン「オキシトシン」に関する研究も進みつつあります。
犬との信頼関係ができていれば、意識的にアイコンタクトを増やすことでも、十分に犬にはハッピーな気持ちになってもらえるはず。犬と飼い主両方のQOLを高めていくためにも、オヤツ以外の愛情表現で「大好きだよ」「おりこうだね!」を伝えてみませんか?