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2019.03.20

犬は牛乳を飲むと下痢になる?その理由と犬用ミルクについて

犬が牛乳を飲むと下痢になるって本当?

犬との暮らしの知恵や噂のようなもので「犬に牛乳を与えてはいけない」というものを聞いたことはありませんか?
でも、子犬に牛乳を与えていた、という方や今でも日常的に犬にミルクを飲ませているという方も多いのではないでしょうか。犬の中には、牛乳を飲んでも問題ない犬、そして体調を崩してしまう犬がいるような印象を受けますよね。
体調を崩してしまう例としては牛乳を飲んだ後には下痢になってしまう、という犬が多いようです。牛乳を飲んで下痢になってしまう犬と問題ない犬がいるのはなぜなのでしょうか?

犬が下痢になる理由の乳糖とは?

「犬は成長と共に乳糖を分解できなくなるから、牛乳を与えるのは良くない。」

犬たちと一緒に暮らしている方なら、きっと一度は聞いたことがある言葉なのではないでしょうか。乳糖とは、乳に含まれている糖質の一種です。もちろん、犬たちがお母さん犬からもらっていたお乳にも含まれている成分です。
実はこの乳糖は、単糖類であるブドウ糖や多糖類のでんぷんとは異なり、二糖類と呼ばれる仲間に含まれています。
二糖類は、その名の通り、一つの糖ではなく、二つの糖の分子が結合してできています。二糖類を栄養として取り込むためには、この状態を腸内の酵素が分解し、代謝可能なブドウ糖などにして取り込む過程が必要です。
乳糖もそのままの状態では糖分として体内で代謝することができず、腸の中の分解酵素"ラクターゼ"と呼ばれる酵素によって、一度分解された後に吸収されます。

一方で、このラクターゼと呼ばれる酵素が十分に働かなかった時など、乳糖が分解されずに腸を進むことで、下痢が引き起こされることがあります。
消化できなかったものをいち早く体外へ排出しようとする、生理的には正常な反応です。

犬は完全に乳糖を分解できなくなるの?

一般的に犬たちも、大人になっても乳糖を分解する酵素"ラクターゼ"が腸内から完全に消えてしまうことはありません。しかし、お乳で育つ離乳前をピークとして、そこから酵素の活性性がピーク時の約10%前後まで失われていくことは事実のようです。

また、犬たちのお乳に含まれている乳糖の量は、3.1%前後といわれています。一方で牛や羊などの乳には4.5~5%の乳糖が含まれており、ラクターゼが十分に活性化しているはずの子犬の時期であっても、たくさんの牛乳などを与えるとお腹を壊してしまうことがあります。
そのため、犬用ミルクなどでは、腸内でラクターゼが乳糖を分解するのと同じように、乳糖を加水分解処理を施すことで消化できる形にする加工が施されています。

犬用ミルクとして人気の高いヤギミルク(ゴートミルク)は、もともとの乳糖の分子が牛乳と比較すると小さいといわれていて、そのため牛乳よりも乳糖の分解がされやすいといわれています。

おわりに

ちなみに、健康な成犬の場合、1g/1kg(体重)以上の乳糖を摂取すると下痢が起こりやすい、とされています。
この量は牛乳を20ml/kg(体重)に相当します。たとえば、10kgの犬の場合、200mlの牛乳を飲むと下痢を起こす可能性が高くなる、ということですね。

ミルクは栄養価も高く、嗜好性も高いため、水分補給が必要な犬や食欲がない犬たちにとっては、とても役立つアイテムです。
"たくさん与えすぎると体に良くない"というのは、乳糖に限ったことではありません。ミルクの場合も、他の食材とのバランスを考えたり、乳糖の摂取量に気をつけながら、犬たちの食事やオヤツに取り入れてみてくださいね。

ちょっとブレイク ポチっとクイズ

DOG's TALK

問題:すべての犬は年齢問わず牛乳を飲むと下痢をする。〇か×、どっち?

回答:正解は、×です。子犬の時期は牛乳に含まれる"乳糖"を分解する酵素、ラクターゼが十分に体内にあるため、牛乳を飲んでも下痢をしません。成長とともにラクターゼは体内から減っていく傾向にあり、成犬になる頃には牛乳の消化が難しくなり、下痢しやすくなっている子が多いです。