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2024.06.03
【管理栄養士監修】犬の夏バテ対策に役立つ食事|おすすめの食材5選!
夏になると食欲が低下して食事を残す、散歩を嫌がり活発さがなくなるなど、夏特有の悩みがある飼い主の方は多いのではないでしょうか。
犬は体温調整が苦手な動物です。快適な空間が確保できないとストレスから、食欲や活動に影響を与えます。
本記事では、管理栄養士の資格も持つペット栄養管理士が、犬の夏バテ対策に役立つ食事の与え方を解説します。
おすすめの食材や夏の食事で気を付ける点も紹介するので、犬が夏も健康に過ごせるよう、参考にしてみてください。
ペット栄養管理士がアドバイス! 栄養学から見る犬の夏バテ対策になる食事のポイント
犬の夏バテ対策を意識した食事を選ぶにあたり、ポイントになるのが体温調節を意識すること。
犬の皮膚には、汗腺がなく、人と同じように汗をかけません。
犬は、口を開けて呼吸するパンティングで熱を発散するほかなく、人間と比べると体温調整が苦手な傾向にあると思います。
旬の野菜を活用し身体を冷やしたり、スープを取り入れて水分補給を促したりすることで、体温調節をサポートして、夏バテを対策していくのがオススメです。
■体温調整に役立つ旬の食材を取り入れる
犬の夏バテ対策として、体温調整に役立つ旬の食材を取り入れるのは効果的。
中国伝統の薬膳に基づいた考えで、身体を冷やす寒涼性と温める温熱性、属さない平性といった分類があります。
これらの分類は体内での食材の性質の違いによるもので、さまざまな特性を持つ食材をバランスよく活用することで、犬の心身の健康に役立てていくという考え方です。
また、取り入れるのであれば、栄養豊富で新鮮なものが手に入りやすい、旬の食材がオススメです。
活発で外遊びが多い犬や、熱を溜めやすい短頭種は、「寒涼性」の食材を取り入れるとよいでしょう。
身体を冷やす寒涼性の食材は、きゅうり、トマト、レタス、わかめ、ひじき、スイカなどがあります。
逆に、冷房の効いた室内で過ごす時間が長い犬は、身体が冷えている可能性も考えられます。
血行促進、代謝促進の作用がある温熱性の食材として、鶏肉、豚肉、マグロ、サケ、納豆、かぼちゃ、生姜もオススメしたい食材になります。
■スープを活用して水分補給する
スープを活用して水分補給を促すことも、犬の夏バテ対策につながります。
犬は、体温調整の方法として、体温を下げるために冷たい水を飲みたがります。
犬は人に比べて喉が渇く感覚を感じにくいので、冷房の効いた部屋で過ごすと、体温が高くなりにくいために飲水量が減少し、脱水症状に陥りやすく注意が必要です。特にシニア期の犬は脱水症状が出やすい傾向にあるので、こまめに水分を摂取できているか確認してあげて下さいね。
犬の1日の飲水量は、体重1㎏あたり50~60ml前後が推奨されています。
気候や食事に含まれる水分量の違いにより、必要な摂取量に差がありますが、体温を下げる必要がある夏場は水分摂取を促し、積極的に与えるようにしましょう。
夏の間はドッグフードのトッピングとして、スープタイプのレトルトを活用すると、手軽に体調管理をサポートできます。
食事とともに水分補給でき、香りで嗜好性を高められます。犬用ミルクや肉や魚の煮汁、昆布やかつおのだし汁を、寒天やゼラチンで固めてゼリーやジュレを作るのも良いですね。
犬の夏の食事におすすめの食材5選!
犬の夏の食事におすすめの食材を5つ紹介します。
トッピングやおやつに取り入れてみましょう。
■胃腸の働きを助けるトマト
胃腸の働きを助けるトマトは、夏が旬の寒涼性食材です。
代表的な栄養素は次のとおりです。
★リコピン、β-カロテン:抗酸化作用、粘膜保護、免疫機能向上
●ビタミンC:抗酸化作用
●鉄:貧血予防
水分が豊富に含まれているトマトは、水分補給にも役立ちます。未熟な青いトマトは微量とはいえ犬にとっての毒性が含まれる可能性があるため、赤く完熟したトマトを選択すると安心です。
消化しやすいよう、加熱し小さくカットして与えるとよいでしょう。
■水分補給を促すきゅうり
寒涼性食材のきゅうりは、水分たっぷりで水分補給にも役立ちます。
あまり栄養豊富な食材ではありませんが、代表的な栄養素は次のとおりです。
★ホスホリパーゼ:脂肪の分解促進
●ビタミンK:カルシウム吸着作用
●ビタミンA:抗酸化作用
きゅうりは低カロリーな野菜なので、太り気味の子にも与えやすいですよね。ただ、与えすぎると下痢になりやすくなるので、注意しましょう。5㎏程度の小型犬には1日あたり、1本の半分以下程度にしておくと良いと思います。
生のまま与えても問題ありません。丸呑みしないよう小さくカットして与えてください。
■疲労回復の効果のあるレバー
疲労回復の効果のあるレバーで、嗜好性を高め、タンパク質やビタミン、ミネラルを摂取できます。
レバーの代表的な栄養素は次のとおりです。
●タンパク質:エネルギー源、免疫力向上、筋肉や骨格形成
●ビタミンB1:疲労回復
●ナイアシン:代謝促進作用
レバーは、必ず十分に加熱してから与えましょう。
加熱により殺菌でき、食中毒を防げます。人用の新鮮なレバーを選択し、食べきれない場合は冷凍保存してください。
■腸内環境を整えるオクラ
オクラは、腸内環境を整える作用があります。
代表的な栄養素は次のとおりです。
●水溶性食物繊維(ペクチン):便秘改善、胃の粘膜保護、整腸作用
●βカロテン:抗酸化作用
●カリウム:血圧低下作用
水分が豊富なオクラは、水分補給の作用もあります。
食物繊維が多い野菜なので、消化機能が未発達、低下している子犬や高齢犬には向かない場合も。
生でも食べられますが、加熱をし、柔らかい実の部分を与えたほうが、消化不良のリスクを軽減できて安心です。
■免疫力を高めるヨーグルト
免疫力を高めるヨーグルトもおすすめです。
代表的な栄養素は次のとおりです。
●乳酸菌:整腸作用を持つ善玉菌
●タンパク質:エネルギー源、筋肉や骨格形成
●カルシウム:骨の発育や維持
ヨーグルトは、消化機能に影響がないか見極め、少量ずつ与えましょう。
カロリー過多にならないよう、砂糖やソースが含まれない無糖のプレーンヨーグルトを選択してください。
酵素が含まれ、食欲促進にもつながるといわれているパイナップルや、抗酸化成分を含むブルーベリーなど、夏の果物と一緒に与えると色どりも豊かになって楽しいですね。
犬の夏の食事に関するよくある質問
食欲がなく、食事を時間通りに食べない、どのようなことに気を付けるべきかと悩む飼い主の方は多いと思います。
犬の夏の食事に関するよくある質問について回答します。
■食欲がなくご飯を食べてくれないときは?
食事を与えても食べない場合は、片付けてしまった方が安全な場合があります。
夏の気温は、細菌の繁殖活動に適しています。長時間食べかけの食事を放置することで、ドッグフードの腐敗が進んでしまい、食べた犬が体調を崩してしまう可能性があります。
夏場は、ドライフードは30分程度、水分を多く含む手作り食やウエットフードは、犬が興味を示さないようであれば15分程度で片付けましょう。
時間が経過しても食べないことが1日以上続く場合は、夏バテ以外に食欲が低下する不調の原因も考えられます。必ず獣医師に相談し、適切な検査をしてください。
夏バテで食欲がない場合は、冷房や風通りのよい部屋を用意し、犬にとって過ごしやすい空間作りをしてあげましょう。
冷感マットや保冷剤を活用するほか、エアコンに加えてサーキュレーターで空気の流れを作ることも効果的。朝晩の涼しい時間帯に、適度な運動をおこなうことも、一定の食欲キープに役立ちます。暑いとつい散歩も疎かになりがちですが、犬の食欲不振は運動不足のせい…というケースも少なからずあるそうです。
■夏の食事で気を付けることは?
夏の食事で気を付けることは、冷たい食事にしすぎないことです。
冷たい食事の与えすぎは、胃腸の機能を低下させ、消化不良を起こしやすくします。
また、そこに運動不足が重なったりすると、さらに食欲を低下させることにつながります。
氷や犬用アイスクリームなど冷たい食事を与える場合は、量やタイミングに気を配りましょう。
ほかの食事やおやつと組み合わせ、オヤツばかりを与えすぎないよう、意識しながら量を調節してみてくださいね。
散歩の後や真昼の暑い時間帯に与え、起床直後や寝る前は控えてください。
まとめ
本記事では、犬の夏バテ対策になる食事の与え方を解説しました。汗をかかず体温調整が苦手な犬のために、食事を工夫し、過ごしやすい快適な環境づくりが大切です。
夏におすすめな水分補給や疲労回復に効果的な食材を活用し、夏バテしにくい健康づくりに役立てましょう。
ペット栄養管理士・管理栄養士:村瀬由真
*1 4年制大学の管理栄養学科を卒業。食事と栄養の知識を活用し、動物病院や給食委託会社での勤務を経験。現在はチワワや猫たちと一緒に暮らすライター