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2021.10.27
【#大きな犬と】水害や震災など災害への備えを万全に!~大型犬との避難経験者から学ぶ~
同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、遊びや食事や健康といった暮らしの情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班
今回のお役立ち情報「防災」
台風襲来時に、大きな犬と河川近くの自宅から避難した経験があり、“ペットライフセーバー”の認定資格も持つマロンママさんに災害対策について教えていただきます。
多摩川が氾濫した令和元年台風19号の記憶
2019年10月半ばに関東を襲い、各地に大きな被害をもたらしたのが、令和元年台風19号です。
台風19号の被害により多摩川が氾濫し、2頭の犬をはじめ複数のペットと暮らす川崎市在住の男性が、浸水した自宅マンションの1階自室で亡くなりました。
その半日ほど前、多摩川にほど近い一軒家に住むマロンママさんは、ハリケーン級の台風19号が近づくことに、不安を感じたと振り返ります。
「多摩川の氾濫による浸水被害が想定される地域に、我が家はあります。
1974年、多摩川の堤防が決壊して19棟の家屋が流された“多摩川水害(狛江水害)”も記憶から消えていません。なので、台風19号が直撃するとの予報を見た時点で、自宅に留まるのは避けようと決意しました」
マロンママさんは、バーニーズ・マウンテン・ドッグ歴30年あまり。現在は、推定7歳の元保護犬のマロンくんと狛江市に在住しています。
「近くには、ペット同行避難が可能な避難所もあります。けれども、大型犬のマロンが入ったら迷惑だろうと思い、最初から避難所行きは選択肢にありませんでした」
そう語るマロンママさんが考えた計画は、自家用車で安全な場所まで行き、そこで暴風雨が過ぎ去るのを待つこと。
「とはいえ、突風で車が飛ばされる映像を見たこともあるので、できれば安全な建物の中で過ごしたいとは思いましたが……」
そんな折、マロンママさんの携帯に、数名の“犬友”から連絡が入ったと言います。
「『川から離れている安全な我が家に、マロンくんと避難しておいで』というお誘いでした。『ありがとう!』と、避難勧告が出ると同時にマイカーで犬友宅へ向かいました」
犬トモ宅で安心して過ごす
車で10分ほどの場所にある犬友宅に到着したマロンママさんは、2階のリビングに案内されました。
「活発な大型犬3頭は、みんな3階に移動させたと言うのです。なわばりでもあるご自宅で3頭がマロンと会うのは初めてだったので、少し臆病なマロンが緊張しないようにとの配慮でした。その夜は1階の部屋で過ごさせてもらい、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」と、マロンママさん。
翌日帰宅すると、心配していた浸水被害はありませんでした。
けれども、マロンくんの散歩でいつものように訪れた多摩川河川敷の光景に、息を飲んだそうです。
「河川敷にあった大木が、何本もなくなっているんです。20年ほど暮らしてきて、ここまでの水害は初めてですね」
また、1974年の“多摩川水害”発災時、実際に流される家々を目撃した犬友が現在経営するアメリカングッズショップが、台風19号の被害で床上浸水の被害に遭ったこともマロンママさんは知りました。
その“そらパパ”さんは、次のように語ります。
「1974年以降は洪水対策もされたし、まさか浸水するなんて。うちは小型犬だけど、16歳の老犬だからなぁ。いくら犬の同伴が可能でも、超高齢犬には避難所の滞在はストレスになるだろうから、次に同様の台風が来ても、自宅の2階で台風が過ぎ去るのを待つしかないと腹をくくっていますよ」
早期準備と日頃のトレーニングが重要!
“わんわんパトロール”のバンダナをマロンくんにつけて散歩し、地域の防犯にも一役買っているマロンママさんには、犬友が大勢います。マロンくんや犬仲間が多摩川で万が一おぼれたり、散歩中に体調を崩したりした緊急時のためにと、マロンママさんは“ペットライフセーバー”の認定資格も取得しました。
そんなマロンママさんの犬友10名ほどに聞いたところ、台風19号の襲来時、多くは自宅に留まっていました。とはいえ、地下駐車場のマイカーを安全な場所に移したり、犬用グッズをマイカーに積んだりと、災害に備えた飼い主さんも少なくありません。
なかには、小型犬と一緒に最寄りの避難所を訪れたものの、犬の同伴は不可能だと伝えられて帰宅した人もいました。
中型犬と暮らすKさんは、発災時の避難先で必須になるクレートトレーニングが大切だと説きます。
「クレート(ケージ)の中は安心できると感じられるように、日頃からトレーニングをしています。今度、避難勧告が出たら、クレートに犬たちを入れてひとまずはマンションの階上に避難する予定です」
同行避難と同伴避難は、異なります。同伴避難が可能な避難所ではペットと同室で過ごせますが、同行避難の場合はペットが避難所に入れても、犬は別室のクレート内などで過ごすことになります。
いずれにしても、防災対策のひとつとして、大きな犬にもクレートトレーニングはしておけば安心でしょう。
なお、大きな犬のクレートは、折り畳めるタイプが便利です。
大きな犬と暮らす飼い主の災害への備え方
マロンママさんは、保護時に男性への恐怖心が強かったマロンくんの“人慣れ”への努力も惜しみませんでした。
「犬の攻撃行動の多くは、恐怖心によるものだそうです。
大きな犬が社会で受けれられるためにも、『男性も女性も子どもも、みんなやさしいんだ』とマロンが思えるように、積極的に人慣れを行いましたね。おかげで、今では男性に頭を撫でられても平気になり、それが犬友宅への一時避難を可能にしたのだと思っています。
大きな犬はとくに、どんな人との触れ合いも大丈夫になるような“社会化”に力を入れるのが、防災対策としても大切だと考えます」
水害や土砂災害や震災時は、主要な交通網が遮断されて物流が滞る恐れもあります。
そのため、マロンママさんや犬友さんたちの多くは、2019年の台風19号をきっかけに、ドッグフードの備蓄を増やしたとも語ります。
ドッグフードと人間用も含めたミネラルウォーターや缶詰食品などは、古いものから順に日常生活でも使用する“ローリングストック”をしながら、最低2週間分は確保しておくと良いでしょう。
「多くのケースで、あっという間に浸水しますからね。いざという時はすぐ逃げられるように、玄関の散歩グッズを収納するスペースに、数食分のフードやワクチン接種証明書など必要なものを入れたリュックを置くようにしています」と語る犬友さんもいました。
フードやクレートなどのハード面でも、しつけなどのソフト面でも、防災対策を今一度見直しつつ、いつ何が起こっても迅速に対処できるように備えたいものです。
■ 大きな犬との災害対策のまとめ
・親族や友人宅など、大きな犬と避難できる場所をいくつか確保しておく。
・大きな犬との移動で必須になるマイカーは、いち早く安全な場所に移動する。
・最低2週間分のドッグフードを備蓄しておく。(一軒家の浸水被害への備えとしては、2階や3階にもフード類を保管しておくのがベスト)
・どんな場所でもストレスなく過ごせるように、家族以外の人や犬、物音などに慣らす。(子犬期の適切な“社会化”がもっとも有効)
・クレートトレーニングを万全にしておく。
・犬用防災リュックに、数食分のフードやワクチン接種証明書、名前や生年月日などを書いた大きな犬の写真を入れて玄関近くに置いておく。
・最寄りの避難所が、ペット同行避難可あるいは同伴避難可なのかを事前に確認しておく。
ライター:臼井 京音
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