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2022.04.04
【#大きな犬と】盲導犬候補のパピーと暮らす!シニア世代の笑顔の毎日
同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、最新情報やお役立ち情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班)
今回のお役立ち情報ボランティア生活
退職して時間ができたからこそ、盲導犬候補のパピーを約1年間の期間限定で迎えて“飼育奉仕”生活を送る、シニア世代の夫妻の笑顔あふれる子犬ライフを紹介します。
4頭目の盲導犬候補がやってきた
「あら~、鼻に泥がついてブチャイクになっちゃったわ」「そこがまた、かわいいんだよね~」と、やわらかな声でポテ子ちゃんを撫でる松本さん夫妻。撫でられているラブラドール・レトリーバーは、2021年の春から約1年間の予定で松本さん宅にやってきた盲導犬候補です。
松本さんは、横浜市内に一軒家を構えて数年が過ぎた2000年から、“公益財団法人アイメイト協会”のボランティアとして、盲導犬候補の子犬を預かる“飼育奉仕”や、協会から預かった母犬の出産を含め生後2ヵ月齢までの子犬の世話をする“繁殖奉仕”、盲導犬を引退した犬を迎え入れる“リタイア犬奉仕”に携わってきました。
「子どもたちが小学生だった2000年に初めて“飼育奉仕”で、盲導犬候補の子犬を預かりました。
2頭目の子犬は、なかなかにイタズラ好きだったのを思い出します。息子のブロック玩具などを飲み込んでしまったり……。うんちでおもちゃが出てきたときには、ほっと一安心でした。気づけばじゅうたんが段々と小さくなっていて、『あれ!? これ、少しずつかじったでしょ?』と大笑いしたこともありましたね」
今回で4頭目となる“飼育奉仕”のパピーのポテ子ちゃんは、2021年の春に協会に戻っていったパンジーちゃんとはまた違う性格だとか。
「ダメだとわかっているけど構ってほしくて、ワザとイタズラするんですよ。『No!』と注意すると『あら、叱られちゃったけど構ってもらえたわ。フフフ』と満足そうな顔をするんです(笑)。
それに比べてパンジーは、『アタチはダメなことはしません、危ないこともしません、慎重なんです』という感じ。
どの子も個性的で、かわいいですね」
4頭とも、アイメイト協会が盲導犬に求める「明るく、細やかで、臆病すぎず、陰ひなたのない資質」である点は共通しているそうです。
シニアにぴったりの期間限定パピーライフ
松本さん夫妻はリタイア犬を見送ってから4年間ほど、自宅に犬がいない生活を送っていました。お互いが仕事で多忙で、犬の留守番時間が長くなる点などを危惧したからです。
けれども夫の裕さんが退職をして自身で在宅メインの新たな仕事を始めたことで、子犬を育てるボランティアを再開。
「リタイア犬と暮らして老犬介護をするには、還暦を過ぎた私たちには厳しいと感じました。1年ごとに子犬を預かるならば、体力的にむずかしくなったら、その子の預かり終了時でボランティアをお断りできるので不安はありません」(裕さん)
「ラブラドール・レトリーバーとはいえ、体の小さい子犬期からスタートして12ヵ月の期間限定ならば、シニア世代でも体力的な問題を感じないですね。大好きな大型犬と暮らせて幸せです」
そう語る明子さんは、子どもの頃にイングリッシュ・セッターと暮らした経験から「一緒に生活するならば大きな犬がいい!」そうです。
毎日がワクワク体験の連続
アイメイト協会の盲導犬候補を迎えた家庭に求められるのは、子犬にたくさんの愛情を注いで、楽しく社会経験を積ませること。
ポテ子ちゃんは毎日、午前と午後の計2回、それぞれ1時間以上散歩に行きます。
「公園で子どもたちと触れ合ったり、ほかの犬にあいさつをしたり、公園内の丘を上って探索したり、鳥を観察したり……。ポテ子なりに刺激的で楽しい毎日を送っているはずです」(裕さん)
預かり期間中にどのようなトレーニングをするかは盲導犬の育成団体により異なりますが、アイメイト協会の場合は、犬と一緒に暮らしている上で必要なしつけはそれぞれの家庭で教えます。
「みんなトレーニングが大好きみたいで、“待て”もトイレマナーもあっという間に覚えてしまうんですよ」(明子さん)
自宅でも、ポテ子ちゃんはソファに寝転ぶ息子さんの上に乗っかって遊んだり、椅子に座っている裕さんや明子さんの足元にペタッとくっついて寝転がったり、楽しみは尽きません。
盲導犬の生活は満たされている
松本さん夫妻には、視覚障害があって盲導犬と暮らす親戚がいます。
「4児の母である親戚は、4頭の盲導犬と暮らしてきました。外出時にハーネスを装着すると仕事モードがオンになりますが、自宅ではリラックスモードで家族に甘えたり、遊んだりもしています。
そうそう、『盲導犬のおかげで外出に対する自信と自由を得られた』と語る彼女は、盲導犬と一緒に海外留学も果たしたんですよ」(裕さん)
「盲導犬は過酷な仕事でかわいそうだと実態をよく知らずに言う方もいるようですが、親戚の生活も含めて私たちが見ている限り、留守番やペットホテルとも無縁で、大好きなパートナーといつも一緒にいられて幸せそうです」(明子さん)
電車内や飲食店にいる盲導犬が、ユーザーの足元で伏せて休憩しているシーンを見ても、外出中にずっと気を張り続けているわけではないとわかります。
松本家で10歳ごろから過ごしたリタイア犬は、15歳と16歳で天寿をまっとうしました。
健康管理が行き届き、レトリーバー種が本来持つ作業欲求も満たされつつパートナーとの生活を楽しんでいるからか、家庭犬のラブラドール・レトリーバーよりも盲導犬のほうが寿命が長い傾向にあるという調査結果もあります。
別れの日はつらい?
盲導犬候補が1歳2ヵ月齢になったら、アイメイト協会の施設に戻り本格的なトレーニングがスタートします。
「よく、涙でいっぱいのお別れなのではと聞かれるのですが、私たち家族はいつも『頑張れ~!』とエールを送りながら盲導犬候補を見送っています。さびしさよりも、応援する気持ちのほうが大きいです」(明子さん)
「協会に依頼しておけば、新しい盲導犬候補との出会いもありますしね」(裕さん)
コロナ禍が落ち着いたら、松本さん夫妻はポテ子ちゃんと一緒に旅行に行く計画を立てているとか。
「お出かけ、楽しみでちゅね~」
ポテ子ちゃんと接するときはつい“赤ちゃん言葉”になってしまうと笑う松本さん夫妻に撫でられるポテ子ちゃんの表情は、とても満足そうでした。
ライター:臼井 京音
アイメイト協会では、視覚障害者の歩行をサポートする補助犬(盲導犬)をアイメイトと呼んでいますが、本記事では盲導犬と表記しました。
*1 公益財団法人アイメイト協会 https://www.eyemate.org/
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