• コラム
  • 獣医師コラム

2023.03.20

犬の腎臓病は回復するの?ステージって?獣医さんに質問してみました。[#腎臓病について] 

犬の腎臓病は回復するの?ステージって?獣医さんに質問してみました。[#腎臓病について] 

犬の腎臓病についてどれくらい知っていますか?

「腎臓病」は犬の病気のひとつですが、どのような症状が出て、他の病気とはどんなところが違うのか、ご存知でしょうか?
このページを見ている人の中には、実際に一緒に暮らす犬が腎臓病と診断された、という方もいるかもしれません。
腎臓病は、とにかく「正しく知る」ということが大切な病気です。飼い主がどれくらい腎臓病について知っているか、腎臓病の犬に対してできることは何か、を理解しているかによって、犬の人生(犬生)は大きく変わるかもしれません。

今回は、正しく知りたい「犬の腎臓病」について獣医さんの解説をお届けします。

DOG's TALK

監修者:獣医師 菱沼 篤子

監修者:獣医師 菱沼 篤子

犬の栄養指導や犬の健康に関する専門知識を持つコンサル担当スタッフとして、さまざまな飼い主のお悩みを聞いている。

犬の腎臓病ってどんな病気?

犬の腎臓病は、腎臓を構成するさまざまな組織や器官の機能が低下し、腎臓が本来の役割を十分に果たせない状態、病気のことです。

犬の腎臓病は、その特性から大きく2種類に分類できます。

 

■急性腎不全

治療により腎臓の機能が回復する可能性がある

急性腎不全 特長
数時間~数日の間に急激に腎機能が低下する状態
中毒、あるいは腎臓への血流低下で起こる
急激に症状が変化する

■慢性腎不全

腎臓の機能は基本的に回復しない

慢性腎不全 特長
自覚症状がないままゆっくりと腎臓の機能が低下
高齢、遺伝、腫瘍、感染症など様々な原因がある
特定の犬種で発症しやすい

簡単に特徴をそれぞれ書き出してみました。
この中で、一番重要なのは、急性腎不全は治療によって腎臓の機能が回復する可能性がある一方で、慢性腎不全では腎臓の機能が回復することはほぼありません。
そして、腎臓病と診断される犬のほとんどが慢性腎不全です。


腎臓は犬の背中に2つで1対ある臓器で、腎臓の機能が一部失われたとしても他の残っている腎臓が失われた分まで働き、その役割を維持することができるといわれていますが、失われた分まで働く腎臓へのダメージは大きく、加速度的に病気が進行していってしまいます。

犬の腎臓病は治療することができるの?回復できる?

残念なことですが、現時点で、慢性腎臓病になってしまった犬を完治させる方法は見付かっていません。
動物病院では、「腎臓の機能が失われるスピードを緩やかにする」ことに重きを置いて、食事指導や投薬を行うことが多いと思います。

慢性腎臓病は、症状にもほかの病気と比較して特徴があります。
それは、初期の慢性腎臓病ではほとんど症状がない、ということ。
飼い主が気が付くことができる変化が見られた時には、すでにある程度病気が進行してしまっているということがほとんどです。

 

■代表的な慢性腎臓病の症状

・飲水量が増える、尿量が増す
・尿の色やニオイが薄くなる

・食欲不振
・体重減少
・嘔吐
・貧血
・下痢
・口臭
・尿毒症(意識混濁、卒倒、けいれんなど))

腎臓の機能が失われれば失われるほど、飼い主も気が付きやすくなっていきますが、その時にはもう正常な部分では補い切れないほど機能が失われている状態に。

1年、1か月、1週間と少しでも早く犬の腎臓に起こっている異変に気が付くことができ、そして食事からの対処を始めることができれば、そこから進行を緩やかにすることが可能になるのも「慢性腎臓病」の特長のひとつです。

犬の慢性腎臓病のステージとは?

犬の腎臓病は、腎臓の機能がどれくらい残っているのかを表す「ステージ」で進行具合を表すことがあります。
ステージの判断は、血液検査、尿検査、超音波検査などのほか、飼い主が気が付く日常の行動の変化なども元に評価されます。

腎機能の低下に気が付くためには定期的な検診で、血液検査と尿検査を受けることが大切です。
普段の生活の中では、特に水を飲む回数が増えたり、オシッコの回数が増えたりすることで異変に気が付くケースが多いようです。
ちなみに、腎臓の機能が失われるにつれて、犬の尿は濃縮されにくくなり、尿の量が増えニオイや色が薄くなるという特徴があります。犬のオシッコのニオイや色が薄くなった、という変化に気が付いて、比較的早い段階で腎臓病が見付かる、ということもあります。
もちろん、それだけで腎臓病と断定することはできませんから、動物病院では血液検査・尿検査などを合わせて、慎重に見極めを行います。

「腎臓病」と診断された犬の余命は?

各ステージごとに、大まかに目安といわれているのは以下の通りです。

<ステージごとの腎臓病の犬の余命の目安>

ステージ2:約14.78か月
ステージ3:約11.14か月
ステージ4:約1.98か月

受け止められないほど、衝撃的な数字が並んでいますが、これはあくまで「腎臓病が分かっても治療を行わなかった場合」の目安です。もちろん、個体差もあります。
それでも慢性腎臓病になっていることが分かってから、食事を慢性腎臓病の犬に合わせた療法食に変更することで、犬の余命は大きく変わるといわれています。

とある研究機関では、慢性腎臓病と診断された犬に「一般食」と「腎臓ケア食事療法食」を与えた場合を比較したとき、その余命には約3倍の差が出たというデータも出ています。

慢性腎臓病と診断された犬にとって、どのような食事を食べていくか、はとても大きな問題なのです。

犬の慢性腎臓病の治療では、どんなことを目指しているの?

犬の慢性腎臓病は、腎臓の中の糸球体と呼ばれる部分に異常が発生してさまざまな症状が引き起こされていることが多いといわれています。

糸球体は体内を流れる血液の中の老廃物や不要物をろ過し、尿の元(原尿)を作る器官です。イメージとしては、体のフィルターのようなものです。
腎臓の機能が低下した犬では、フィルター(糸球体)の目が詰まってしまったことで、老廃物や不要な毒素などを排出できず、体内に有害な物質がどんどんたまってしまっていく状態になります。

腎臓病の犬にとっては、体内になるべく毒素を溜めないことが治療のひとつになります。家庭では、飼い主さんの食事面のサポートが何より大切になってきます。

おわりに

腎臓病の犬のために、飼い主ができることとして、まずお伝えしたいのは「犬の食事を選ぶのは飼い主」ということです。
次回の獣医師コラムでは、犬の腎臓を労わる食事とはどんなものなのか、どんなことに注意するべきなのか、腎臓病の犬と食事についてもう少し詳しくご紹介いたします。

どんな病気であっても、家庭で過ごすのであれば、犬の食事を選ぶことができるのは飼い主です。
慢性腎臓病は初期段階では症状が分かりにくいこともあり、発見が遅くなることも多いです。でも、ある程度ステージが進んでしまっていても、療法食を与えることに遅すぎるということはありません。

ページの先頭に戻る