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2024.07.11

低脂肪ドッグフードを選ぶべき犬とは?膵炎、高脂血症...獣医師が解説

低脂肪ドッグフードを選ぶべき犬とは?膵炎、高脂血症...獣医師が解説

犬の健康の基礎となるのは、毎日の食事。犬の体調や生活習慣に適したドッグフードを選ぶことができれば、健康につながります。
今回ご紹介するのは、「低脂肪」という特長を持つドッグフードについてです。

皆さんは、低脂肪ドッグフードにどのようなイメージを持っていますか?どんな子に合っていると思いますか?もしかしたら、合っている犬は想像とは違っているかもしれません。


膵炎や高脂血症、肥満といった健康問題を抱える犬は、獣医師から低脂肪ドッグフードを勧められるので、健康維持の大きな助けとなりますが、それ以外の犬にとって低脂肪ドッグフードは合っているのか、どのようなことに注意して選べば良いのか分からない飼い主さんも多いと思います。

そこで、今回は獣医師の視点から、低脂肪ドッグフードの特長と低脂肪ドッグフードを選ぶべき犬について詳しく解説します。
犬の健康に役立つドッグフードを見つけるためのヒントとしてぜひ参考にしてみてください。

DOG's TALK

獣医師 菱沼 篤子

獣医師 菱沼 篤子

犬の栄養指導や犬の健康に関する専門知識を持つコンサル担当スタッフとして、さまざまな飼い主のお悩みを聞いている。

低脂肪ドッグフードってどんなもの?

まずは、低脂肪ドッグフードとはどのようなものなのかをご紹介します。
この基準を満たしていれば低脂肪ドッグフード、というような明確な基準があるわけではありません。ですから、相対的に他のドッグフードと比較して脂質(脂肪)の値が低い、というドッグフードということになると思います。(ちなみに、「低脂肪」は、ラベルに記載されている脂質が低いことを表しています)

現在、主流となっているドライフードでは、だいたい15%前後のものが多いようです。ポチで取り扱いしているものの中では、高いものでは脂質が30%以上含まれているものもあります。
膵炎と診断される前に食べさせていたドッグフードの裏ラベルに記載の、保証分析値「脂質」のところをチェックしてみてください。

一般食の中から低脂肪ドッグフードと呼べる基準を考えるなら、10%以下であれば比較的低脂肪のフードといえます。
POCHI取り扱いフードの中でとくに低脂肪と言われているフードの脂質は7.9%、7.5%、6%、などで、一番低いものでは5%でした。

これらの中でも、とくに脂質が低く設定されているものは、低脂肪療法食と呼ばれることも多いです。療法食なので、特定の病気や体質的な傾向に合わせて選択するフードとなります。

 

一番左のものが、脂質低め、一番右のものが低脂肪フードと言えます

一番左のものが、脂質低め、一番右のものが低脂肪フードと言えます

■低脂肪ドッグフードを与える時の注意点

低脂肪ドッグフードの特長は、脂肪が低く抑えられていることです。
本来、犬の健康維持のために脂質は一定量以上が必須となります。なんとなく、脂肪や脂質=肥満の原因というイメージを持っている方も多いのですが、エネルギー源になったり、皮膚の表面を保護したり、様々な場面で活躍している栄養です。
脂質が不足しがちになると、エネルギー不足になるほか、皮膚や被毛のパサつきから皮膚トラブルにつながることも多いです。

 

■ドッグフードを低脂肪にするデメリット

脂質は犬の嗜好性にも関係していると言われています。これは、脂がほとんどないお肉より、脂が乗っているステーキの方が美味しい、と感じるようなものなのかもしれませんね。そのためか、低脂肪ドッグフードは、高脂肪のドッグフードと比較して嗜好性が低くなる傾向にあるようです。
せっかく犬の体調管理のために低脂肪ドッグフードを選んでも、喜んで食べてくれない…というのでは本末転倒。
少しでも犬たちが喜んで食べてくれるよう、メーカーもさまざまな工夫を凝らしています。

低脂肪ドッグフードが適している犬の特徴

ここからは、低脂肪ドッグフードをオススメしたい犬は以下のものになります。

■膵炎になったことがある犬
■高脂血症と診断されたことがある犬
■膵炎、高脂血症になりやすい犬種、そのミックス犬

 

肥満気味の犬について

多くの方が勘違いされているのが、体重管理のために「低脂肪ドッグフードを選ぶべき」という考えです。
実は、低脂肪のドッグフードは犬の体重管理に役立つために作られているものではありません。
低脂肪ドッグフードは、その名の通り脂質は低く抑えられているものの、脂質の代わりにタンパク質や炭水化物でエネルギー源を補っています。
そのため、全体的な摂取エネルギーを抑えていくことが必要になる体重管理用フードとは、本来の目的が異なっています。
そのため、体重管理が必要な犬に「低脂肪ドッグフード」は最適な選択肢とは言えません。体重管理が必要な犬には「体重管理用」とされているフードを選ぶのがオススメです。

犬の膵炎とは?原因と症状をチェック

犬の膵炎と一言でいっても、急性膵炎と慢性膵炎の2種類があります。
まず、急性膵炎は、膵臓が作っている消化酵素が突然活性化され、食物ではなく膵臓自体を消化してしまい、組織に炎症が起きる状態を指します。

普段、膵臓で作られる消化酵素は、小腸に分泌されてから初めて活性化され、消化能力を持つようになるのですが、何らかの理由により膵臓内で活性化されてしまうと、消化酵素が膵臓の組織を分解し始め、機能が低下するだけではなく激しい痛みを伴う炎症を引き起こします。
これが急性膵炎と呼ばれる状態です。

一方、慢性膵炎は、常にこういった炎症が少しずつ起きることで、膵臓自体が徐々に硬くなり、消化酵素の流れが悪くなったり、膵臓の機能が落ちてしまっている状態を言います。

膵炎で見られる特徴的な症状として、膵臓が破壊されることによる痛み、また消化不良により起きる症状があります。
腹痛があるとき、犬はよくフセの状態でお尻だけ持ち上げるような体勢をとるため、祈りのポーズ、などと呼ばれ、この体制が見られたら要注意です。
炎症が重度の場合、膵臓以外の組織まで影響が出ることがあり、そうなると多臓器不全と呼ばれる致死的な状態に陥ることもあります。
慢性膵炎では一般的な消化器症状がよく見られ、食欲不振、嘔吐、軟便などがよく見られます。

 

■ 膵炎の原因

膵炎になる明確な原因は分かっていませんが、肥満や脂肪の多い食事なども代表的なリスク要因です。また、大量の食事を食べ続けることも膵炎の原因となるとされています。
これらのほかにも、代謝異常を起こす病気、特に副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症、糖尿病などの内分泌疾患や心臓病、腎臓病との併発、ある種の薬剤、低循環なども膵炎を引き起こすリスク要因と考えられています。

すべての犬種において発症の可能性はあり、シニア期の犬でとくに発症が多いとされています。
シニア期以降の犬では、高脂肪食を続けていること、そして肥満体系になっていることが大きなリスクとなりますので、注意が必要です。

過去に一度でも膵炎になったことがある犬は、再発する可能性があるため、高脂肪の食事は避け、注意して見守ることが必要です。

犬の高脂血症について知ろう

高脂血症とは、血液中の中性脂肪(トリグリセリド)や総コレステロール、またはその両方が常に異常に高い値を示している状態を指します。
12時間以上絶食したあとに血液検査を行い、数値の上昇があれば高脂血症と診断されます。

高脂血症自体は、とくに症状が出ずに、定期的な健康診断やほかの病気の検査ではじめて診断されることが多いと言われています。
高脂血症がほかの病気のリスクとなることが知られていて、膵炎や胆泥症が代表的な病気の一つです。
一方で、他の原因によって高脂血症が引き起こされることも多く、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌疾患が高脂血症を引き起こしていることもあります。

高脂血症状態の犬では、食欲低下、下痢、嘔吐、腹痛、発作、ブドウ膜炎、膵炎などが見られることがあります。

 

■ 高脂血症の原因

まず、犬の高脂血症は遺伝的に起こりやすい犬種があります。
ミニチュア・シュナウザー、ジャックラッセル・テリアやヨークシャー・テリアなどのテリア系犬種、アメリカンコッカー・スパニエルなどのコッカー・スパニエル系、シェルティやボーダーコリーなどのコリー系の犬種が代表的です。
これらの犬種では、とくに高脂血症が起こりやすいことが知られていますので、注意が必要です。

また、運動不足や肥満、脂肪分の多い食事や食べ過ぎ、ストレスなど生活習慣によっても高脂血症は引き起こされます。このタイプの高脂血症は、普段から体調管理に気を付けていれば少しずつ改善される傾向にあります。フードを低脂肪のものに変更し、運動量を調整しながらストレスを溜め込みすぎないようにすることが大切です。

例外として、ステロイドや性ホルモン製剤の投薬などによって、高脂血症状態になることもあります。このケースでは、獣医師の判断に従うことが第一になります。

■膵炎と高脂血症の関係

高脂血症の犬では、膵炎を引き起こしやすくなることが分かっています。
遺伝的に高脂血症になりやすい犬では、膵炎の症状が出ていなくても、食習慣や普段の運動量などが変わったり、ストレスが溜まることで急に膵炎になってしまう可能性もあると言えます。

高脂血症であることが分かったら、膵炎や胆泥症などにつながってしまわないよう、食事面では低脂肪の食事を意識することが、重要になります。
定期的な血液検査や健康診断で、高脂血症気味と言われたら、食事の内容を見直し、低脂肪食に切り替えた方が良いか獣医さんに相談してみてくださいね。

POCHIが作った新しい低脂肪のフード

ポチでは、膵炎や高脂血症、胆泥症といった食事の脂質の量に気を付ける必要がある犬たちのために、新しい療法食を開発しました。

低脂肪で、必須栄養素はしっかり摂れる。そしてなにより、美味しく満足感のある療法食が出来上がりました。

生肉をたっぷり使っていながら、フードに含まれる脂質は、総合栄養食基準の最低値をキープ。
犬たちが大好きなレバーも使用して、療法食なのにおいしくてずっと続けられるごはんに仕上がっています。

脂肪は5%と非常に低い数値になっているので、脂肪の量が多い食事で下痢になってしまう犬や、遺伝的なリスクを配慮して高脂肪食を避けたい、という犬たちにもぴったり。
お腹の調子を整えるプロバイオティクス、プレバイオティクスに加えて、消化に役立つ酵素を豊富に含む豚膵臓乾燥物を使用し、長い目で見ても体調管理に嬉しい食事になっています。

生肉使用のスーパープレミアム品質の療法食です。

生肉使用のスーパープレミアム品質の療法食です。

POCHI 食事療法食 消化器ケア 低脂肪 フレッシュターキー

●保証分析値
タンパク質 30%以上、脂質 5%以上、粗繊維 3%以下、灰分 5%以下、水分 10%以下、カルシウム 0.5%、リン 0.4%、ナトリウム 0.3%、マグネシウム 0.1%、カリウム 0.6%
○代謝カロリー 312kcal/100g

●粒サイズ:直径 約10mm、厚さ 約5mm

●原産国名:オランダ

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DOG's TALK

シェルティと暮らすスタッフ

シェルティと暮らすスタッフ

美味しいものが大好きなうちの子。
高脂血症になりやすい犬種なので、フード選びの際は脂質の量を気にして選んでいました。
現在は特に高脂血症と診断されているわけではないのですが、今後は健康維持につながるよう、低脂肪ドッグフードをローテーションのひとつとして取り入れていこうかなと思っていたタイミングで、総合栄養食の基準を満たしているということもあり、我が家にピッタリ。
胆泥症になってしまった、シェルティのお友達犬にも教えようと思っています。

おわりに

今回は、低脂肪ドッグフードがオススメの犬について、そして低脂肪ドッグフードの特長についてご紹介しました。
犬の健康のベースとなるドッグフード選び。それぞれのフードの特長を知れば、うちの子に合った食事選びの助けになります。低脂肪ドッグフードの場合はとくに特長がはっきりしているので、使用する際は正しく知ることが大切になります。