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2023.04.20
犬に食べさせられる人間用チーズ一覧表!種類別に比較してみました【モッツァレラ、チェダーチーズ】
犬のオヤツなどにも使われる美味しいチーズ。家族が食べていると自分も食べたそうな仕草を見せる犬も多いですよね。
でも「人間用のチーズは犬に食べさせてはいけない」という話があります。実際のところ、どうして犬に人間用のチーズを与えてはいけないのでしょうか?また、様々な種類があるチーズの中には、犬も食べられるものがあるのでしょうか?
今回は、チーズについて栄養価を中心にペット栄養管理士が調べてみました。
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この記事を書いた人:POCHIのペット栄養管理士 岡安
ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。
人間用のチーズを犬に与える時はここに注目!
犬に人間用のチーズを食べさせてはいけない、といわれている理由はいくつか考えられます。
まず、栄養面では以下の成分やポイントを意識してみましょう。
・保存料などの添加物
・塩分(ナトリウム)
・脂質
■保存料など添加物
人間用のチーズの中には、効率的に大量生産するため、保存性を高めるためであったり、食感をよくするためなどに人工的な添加物を使用しているものもあります。
ただ、添加物と言っても人間用の食品に使用できる食品添加物は、原則として厚生労働大臣が指定したものだけです。純度や成分についての規格や、使用できる量などの非常に厳しい基準が定められていて、人体に影響がないことが証明されているものだけが使用されています。
とはいえ、人体に影響がないからと言って犬も大丈夫だとは言い切れないところがあるのも意識しておいたほうがいいと思います。
■塩分に関して
実は、塩分に関して現時点ではAAFCOやFEDIAFなどで摂取量の目安の上限は設定されていません。
これは塩分を構成する成分のうち、ナトリウムの最大値に関することは、重篤な過剰症が出る前には嗜好性や摂食量が低下するためとのことです。つまり、体調に影響するほどの量を犬は食べない…ということ。(しょっぱいですからね)
しかし、心臓や腎臓に不安がある犬では、塩分やナトリウムの制限が推奨されています。また、とくに健康に問題はなくても、塩分が高いものをわざわざ犬に与えたいと考える人は少ないのではないでしょうか。
■脂質
脂質もエネルギー源などとして非常に重要な栄養素のひとつですが、過剰摂取を心配する方が多いです。やはり犬の肥満に直結する可能性を気にしてしまいますよね。
適度に摂取すれば体にとっても良い働きをしてくれる脂質ですが、過剰になると肥満だけではなく皮膚トラブルなどの原因になる可能性もあります。
主食となるドッグフードを適量与えているのであれば、必要量は摂取できていると思われるので、過剰になりすぎないように注意したいですね。
今回は、基本的な栄養素に関する情報にこれらの3つのポイントをプラスして、様々な種類のチーズをチェックしていきましょう。(保証分析値は『文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂))を参照しています)
塩分、脂質、添加物を比較したチーズの一覧表
プロセスチーズは、犬にとっては塩分もカロリーも高め。
スーパーなどで市販されているチーズの中で、最も多いのがプロセスチーズです。商品のパッケージなどにもしっかりと「プロセスチーズ」と書かれているので、見分けやすいです。
プロセスチーズは、一度作られたナチュラルチーズに乳化剤などを加えて加熱して溶かし、再び成形したものです。
製造工程の途中で加熱処理を行うため、乳酸菌は死滅しています。
そのため、保存中に熟成が進むことがなく、ナチュラルチーズに比べて保存性に優れていることが特徴です。
ただし、長期保存を可能にするために保存料などが使用されることがあるようなので、常温保存ができるものなどはどんな保存料が使用されているのか、明記されていないものは注意が必要かもしれません。
■プロセスチーズの成分表/100g中
エネルギー:313kcal
たんぱく質:22.7g (DM:41.2%)
脂質:26.0g (DM:47.2%)
炭水化物:1.3g (DM:2.3%)
食塩相当量:2.8g
ナトリウム:1100mg
塩分量がかなり多く脂質も高めなので、お裾分けには避けた方が無難なチーズです。
カロリーも塩分も控えめ!犬にオススメのモッツァレラチーズ。
モッツァレラチーズは、もちもちとした独特の食感とさっぱりとした味わいが人気のナチュラルチーズの一種です。熟成工程がない、フレッシュチーズのひとつでもあります。
ナチュラルチーズは、乳酸菌が生きていて常に発酵が進むため長期の保存に適していない一方、化学的な保存料は使用されない傾向にあります。
中でもモッツァレラチーズは水分量が多いため、とくに賞味期限が短いチーズです。
■モッツァレラチーズの成分表/100g中
エネルギー:269kcal
たんぱく質:18.4g (DM:42.1%)
脂質:19.9g (DM:45.5%)
炭水化物:4.2g (DM:9%)
食塩相当量:0.2g
ナトリウム:70mg
モッツァレラチーズは、プロセスチーズと比較して塩分量が非常に低くなっています。それに、脂質も控えめになっていることも嬉しいですね。
また、モッツァレラチーズはナチュラルチーズですので保存料の心配はほとんどありません。(※念のため、ラベルで確認を!)
モッツァレラチーズは犬におすそ分けするのにオススメのチーズです。
カロリーは控えめながら、犬には塩分量が気になるカマンベールチーズ。
カマンベールチーズは、柔らかいチーズの表面に白いカビを生やして熟成させたチーズです。
豊かな風味が特徴的なカマンベールチーズは、モッツァレラと同様にフレッシュチーズに分類されます。
それなら保存料が使用されていなくて安心…とはならないのが、この「白カビ」の部分。
人間が食べても問題ない白カビではありますが、犬にとっても同じように害がないのか、明確な証明がされていないというのが実際のところです。
ただ、日本のスーパーなどで販売されているカマンベールチーズは、白カビによる熟成が進みすぎないように殺菌処理がされているものがほとんどです。
この殺菌処理は金属缶もしくは合成樹脂容器に入れて密封し、温度80~120℃で殺菌するという方法で行われていて、何か化学的な薬品で殺菌などはされていません。
■カマンベールチーズの成分表/100g中
エネルギー:291kcal
たんぱく質:19.1g (DM:39.6%)
脂質:24.7g (DM:51.2%)
炭水化物:0.9g (DM:1.8%)
食塩相当量:2.0g
ナトリウム:800mg
カマンベールチーズは、脂質が高くプロセスチーズよりは塩分少なめですが、それでも一般的なドッグフードの倍くらい入っているのでおすそ分けは避けたほうがいいと思います。
チェダーチーズはカマンベールよりもカロリーが高め。犬には△
チェダーチーズは、牛乳を原料とするセミハードタイプのチーズです。
固めの食感と濃厚な味が特徴で、プロセスチーズの材料の一つでもあります。
とはいえ、スーパーなどで手に入る「チェダーチーズ」はチェダーチーズ風のプロセスチーズであることが多いです。(チェダー風プロセスチーズは商品名が「プロセスチーズ」になっています)
以下の成分表はナチュラルチーズとしてのチェダーチーズの値となります。
■チェダーチーズの成分表/100g中
エネルギー:390kcal
たんぱく質:23.9g (DM:36.9%)
脂質:33.8g (DM:52.2%)
炭水化物:1.4g (DM:2.1%)
食塩相当量:2.0g
ナトリウム:800mg
チェダーチーズは比較的水分量が少ないハードチーズです。濃厚な味わいがするため、塩分量も多いのかと思いきや、カマンベールチーズとほぼ同量という結果でした。
チェダーチーズも脂質と塩分が高めなので、おすそ分けは避けた方が良さそうです。
カロリー、塩分が高めも使い方次第。犬にパルメザンチーズは大丈夫?
私たちになじみ深いパルメザンチーズ。粉チーズのイメージが強いですがもともとはイタリアで製造される「パルミジャーノ・レッジャーノ」に似せたチーズです。
パルミジャーノ・レッジャーノは、チーズの王様と呼ばれることもあるくらい高級なチーズだそうですが、その風味を手軽に楽しめるようにと作られたのがパルメザンチーズです。
パルメザンチーズは固いチーズをあらかじめ粉末にしてあります。
比較的水分量が低いチーズですので、その分保存には優れていますが、一部で避けたい保存料が使用されているものもあるようです。
■パルメザンチーズの成分表/100g中
エネルギー:445kcal
たんぱく質:44g (DM:52.0%)
脂質:30.8g (DM:36.4%)
炭水化物:1.9g (DM:2.2%)
食塩相当量:3.8g
ナトリウム:1500mg
栄養面でのパルメザンチーズの特長として、粉チーズとして少ない量でも濃厚な風味を感じられるように塩分量が多いことが挙げられます。これだけ見ると、犬にはオススメできないと感じますが、パルメザンチーズは風味が豊かなので一度に使う量が非常に少なくて済むという面があります。
ティースプーン半分(約1.5g)でも十分に香りを立てることができますから、食欲が落ちた時などの香りづけ程度には活用できると思います。
低カロリーNo.1!カッテージチーズはダイエット中の犬にもオススメ。
カッテージチーズは脱脂乳を原料に乳酸発酵し、チーズを固める酵母・レンネットで凝固したフレッシュチーズです。カッテージチーズ最大の特長は、とにかくカロリーが低く低脂肪なこと。
世界最古のチーズの一つであり、さわやかな酸味とくせのない軽い風味から、非常に食べやすいチーズです。カッテージチーズだけだと少々味気ないと感じる人もいるようですが、それだけに塩分も控えめになっているチーズです。
■カッテージチーズの成分表/100g中
エネルギー:99kcal
たんぱく質:13.3g (DM:63.3%)
脂質:4.5g (DM:21.4%)
炭水化物:1.9g (DM:9%)
食塩相当量:1.0g
ナトリウム:400mg
栄養面で見ると、タンパク質量が高く、脂質は控えめでカロリーも少ないことから、体重管理に活用できる食材と言えます。
それから、カッテージチーズは水分量が比較的多く、また最低限の原材料から作られることもあり、賞味期限が非常に短いチーズです。保存料が使用されることはほとんどないので、添加物が心配な方も安心して犬に与えられるかと思います。
■ ちなみに「自家製カッテージチーズ」について
約70℃前後に温めた牛乳にレモン汁や酢、ヒルトンハーブのサイダービネガーなど酸性の液体を加えることで作ることができるものも、カッテージチーズと呼ぶことがあります。
しかし、厳密にはこれは「パニールチーズ」という別のチーズの製法に近いものです。
低脂肪乳を使って作るカッテージチーズと比較すると、カロリーや脂質は若干多くなりますが、塩分はほとんど含まれないチーズなのでこちらもオススメです。
塩分がもっとも多い!犬にブルーチーズは要注意
ブルーチーズは、牛乳もしくは羊乳から作られるチーズの一種で、アオカビによって熟成を行うナチュラルチーズです。使用されるアオカビの種類によって、ブルーチーズの種類も異なります。
独特の風味が美味しいブルーチーズですが、食感として塩味を強く感じるものが多いです。昔々の犬がまだ野生動物だったころは、カビの生えたものも食べていたとは思いますが、ブルーチーズを食べる=アオカビをそのまま食べることになるので、よくわからないものは避けた方がベター。
■ブルーチーズの成分表/100g中
エネルギー:326kcal
たんぱく質:18.8g (DM:34.5%)
脂質:29.0g (DM:53.3%)
炭水化物:1.0g (DM:1.8%)
食塩相当量:3.8g
ナトリウム:1500mg
ブルーチーズの栄養価をチェックしてみると、やはり一番気になるのはナトリウム(塩分)の高さ。同じ重量でチェックすると、実にモッツァレラチーズの20倍位以上のナトリウムが含まれることになります。
ナトリウム量に関しては、パルメザンチーズと数値上ではほぼ同じですが、ぱらぱらとかけるだけのパルメザンチーズと比較して、ブルーチーズはある程度の塊で食べることが多いので、一口でもそれなりの量のナトリウムを摂取することになります。
アオカビの安全性や塩分の多さなど、気になることが多いのでオススメできない食材です。
おわりに
今回は犬に人間用のチーズを与えることができそうか、さまざまなチーズの種類ごとに調べてみました。ひと言でチーズと言っても含まれる成分や製法によって、違いがあります。
今回紹介した栄養価はあくまで一例であり、すべての犬に当てはまるものではありません。例えば、塩分が多いからと言って絶対に与えてはいけないというものではありません。適度な塩分量は、飲水量を増やしてくれる働きなども期待できます。
ただ、「これって犬にあげても大丈夫かな?」と気になった時には、今回ご紹介したポイントに注目して、うちの子に合っているかを考える際の参考としていただけると嬉しいです。持病がある子にチーズを与えたい、という時はまずは担当の獣医さんに相談するようにしてくださいね。