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2023.11.30
【#大きな犬と】牧羊犬の本能が目覚める!? シープドッグ・トライアルの練習会がすごい!
同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、健康や食事や遊びといった暮らしの情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班)
今回のお役立ち情報シープドッグ・トライアル(牧羊犬競技会)
神奈川県の服部牧場で定期的に行われている、シープドッグ講習会を潜入取材。ハーディング(羊追い)を、真剣な眼差しと効率的な動きで行う犬たちの姿から、牧羊犬のすばらしさを感じずにはいられません。
シープドッグ・トライアル(牧羊犬競技会)とは?
シープドッグ・トライアル(牧羊犬競技会)とは、いかに効率よく羊の群れをゴールまで追い込めるかを競う競技です。
盛んな国は、「国際シープドッグ協会(ISDS)」があるイギリスをはじめ、ヨーロッパ各国やオセアニア。アジリティーやディスクなどのメジャーなドッグスポーツに比べれば、シープドッグ・トライアルは開催頻度も低い日本ですが、全国で競技会も行われていて、近年は認知度も高まってきました。
「日本での競技会参加は、ほとんどがボーダー・コリーです。ハーディング(羊追い)とは、そもそもボーダー・コリーが牧場で担ってきた仕事ですからね」と、服部牧場(神奈川県愛甲郡)で、20年以上にわたりシープドッグ講習会を開催してきた工藤悟さんは言います。
牧羊犬に使う主な4つのコマンド
(1)ライダウン
羊に対して、犬の動きを止めたり、動きの早さを落とす指示語。抑揚を変えて、犬の動く速さをコントロールします。
(2)ウォークオン
前進すること。羊に向かう犬のスピードを、指示する声(や犬笛)の音色や一音の長さで調整します。
(3)カムバイ
羊に対して時計回り(右回り)に回り込ませること。
(4)アウェイ
羊に対して反時計回り(左回り)に回り込ませること。
それではさっそく、夏季を除いて毎週末服部牧場で行われている「シープドッグ講習会」の様子を、のぞいでみましょう。
2代目ボーダー・コリーでのレッスンは!?
「はーい! ライリーにしっかり“ライダウン”させましょ~う!」
羊と講習会参加者がいる柵の外から、工藤さんはアドバイスを送ります。
その声を聞いたライリーの飼い主さんは、「ライダウン」と、大きな声で指示。
講習会はマンツーマンで、参加者のレベルにあわせて工藤さんが指導をするスタイルです。
「そう、だんだんと前よりよくなってきましたよー」と、工藤さん。それを聞き、ライリーの飼い主さんも「よし」という感じで何度かうなずいていました。
ライリーちゃんは、生後4ヵ月でシープドッグ・トライアルをスタートし、レッスン歴は4年です。
「競技会の本番でも、ちゃんとライダウンできないときは成績もふるわなくて……。課題はライダウンですね。
あ、でも、シープドッグ・トライアルは引退した同居犬のベッキーより、ライリーはずっと羊が好きでよく動きます。なので私も、ライリーとの練習では高い集中力が必要ですね」と、ライリーちゃんにお水を飲ませながら飼い主さんは微笑みます。
毎週末の大きな犬と一緒の“作業”が何よりの楽しみ
「結婚してから夫婦で犬と暮らすのは初めてなんですが、ボーダー・コリー以外考えられませんでした」と語る、シープドッグ・トライアル歴1年半の早太郎くんの飼い主さん。
取材した日は2クールとも、早太郎くんパパがフィールドに入って犬に指示を出していました。
「すっかり牧羊犬レッスンの虜になってしまって、毎週、講習会に参加しています。
ボーダー・コリーが本能的に一番やりたいことこそ、牧羊犬としての作業じゃないかな? 満足そうな表情を見せる早太郎と一緒に“作業”をしている実感が得られるのが、魅力です」(早太郎くんパパ)
「シープドッグ・トライアルのむずかしさは、自分、つまり人が成長しないと犬に見抜かれることですね。まさに、人の訓練であり、鍛錬の場であると感じています」(早太郎くんママ)
想像以上に奥深い競技であることが、牧羊犬レッスン参加者の心を虜にしているのかもしれません。
体験レッスン参加でうちの子の本能が開花?
取材した日には、2組の体験レッスン参加者もいました。
初参加の場合、工藤さんも一緒にフィールドの中へ入りアドバイスを送ります。
「さぁ、サラちゃんのリードを引きながら羊の近くに行ってみましょう」
「そうそう、その調子!」
工藤さんの声が響きます。
生後9ヵ月のサラちゃんは、興味津々で羊の群れに近づいて、走る羊を追いかけていました。
「インスタグラムで牧羊犬講習会の様子を見て、楽しそうだなと思って参加しました。もっと羊に興味を持ってくれたら、サラにもできるかもしれませんね」と、飼い主さんは目を輝かせるサラちゃんを見つめながら感想を述べてくれました。
「ボーダー・コリーだから、羊を見れば追うものと思っていたんです。ところが、ノイは地面のにおいばかり嗅いでいて、リードを引きながら近づけても羊に興味を示さなくてびっくりしました。でも、工藤先生の犬たちが登場してお手本を示してくれてからは、犬好きのノイらしく、マネをして突然に羊を追うようになって、その変化の大きさにも驚きました。
犬と自分の意思疎通の大切さについて、新しい感覚や気づきを得た体験レッスンでしたね。おもしろかったです」と、1歳4ヵ月のノイくんとフィールドで走り回った飼い主さんは、汗を拭いながら微笑みます。
フリスビーからシープドッグ・トライアルの世界へ
講習会用のフィールドと小道を挟んだところに、広々としたフィールドがあります。
見ると、自主練に励むベテランそうな男性と、鋭い眼光を羊に放つトライカラーのボーダー・コリーの姿が。
練習を終えて、テントの下で眠る老犬ボーダーちゃんのもとへ戻ってきた男性に、話を聞きました。
「ここで寝ているのが、私と妻をシープドッグ・トライアルの世界へ導いてくれた、現在16歳の媛(ひめ)です。媛はもともとフリスビーをやっていたのですが、7歳の時に骨折してしまったんです。ジャンプ不要のドッグスポーツでリハビリをしようと、先住犬のレイが1歳のときに羊を追わなくてあきらめた牧羊犬講習会を思い出して挑戦したところ、媛も喜んでいたし、私たちもすっかりシープドッグ・トライアルにハマってしまいました」とのこと。
実は羊に興味がなさそうだったレイちゃんでしたが、媛ちゃんが羊を追う姿を見て急に牧羊犬としての本能が目覚めたらしく、9年間のブランクを経て再びシープドッグ・トライアルに取り組むことになったとも。レイちゃんは10歳から13歳まで、シープドッグ・トライアルを満喫しました。
「シープドッグ・トライアルは、老犬になってもできるのがいいところですね。キャンプ気分でのんびりゆったり、牧場で過ごせるのも魅力です」
媛ちゃんが9歳のときに迎えたシャチくんも、生後4ヵ月で牧羊犬講習会に参加し始めました。
「シャチとは、九州や北海道で開催される競技会にも出場しています。とにかく、犬たちも私たちも、シープドッグ・トライアルを心から楽しんでます(笑)」
犬笛で遠隔操作をする大ベテラン
一番小さなフィールドを見ると、ハンドラーがいないのに羊を追うボーダー・コリーの姿が……。よく観察していると、「ピピィーッ」という笛の音に合わせて、犬は羊を動かしているようです。しばらくして現れた、ステッキを持った男性は確かに犬笛を口に挟んでいます。
レイダウン、カムバイ、アウェイ、ウォークオンと、無駄のない機敏な動きを見せていたボーダー・コリーの名前は、わかばちゃん。
「服部牧場には15年近く通っています。今(2023年9月末現在)17歳9ヵ月の先住犬、こま助が2歳半から牧羊犬のレッスンを受け始めたのがきっかけです。
災害救助犬認定もされたこま助ですが、羊はまったく追わず……(笑)。試行錯誤しながら2年を費やし、こま助はようやく羊を追うように。そこからはぐんと成長してくれて、4年目にはプランニングオビス主催の初級クラスの競技会で初優勝。そのあと5年目から8年目まで、上級の“ジャパンナショナル”というクラスで4連覇しました。そして、13歳での優勝を機に引退させ、わかばに引き継ぎました。
わかばも、牧場の羊を土日だけ羊舎から出し入れしているんですよ。こま助は100頭、わかばは400頭の羊をまとめられます。平日はサラリーマンですが、週末は羊飼い気分にどっぷり浸っています」と、わかばちゃんの飼い主さん。
こま助くんの牧羊犬歴7年目ごろからは、羊だけ見て犬を見ない、つまり羊の動きで犬の位置を把握する、逆に犬を見て羊の位置を把握することもできるようにもなったとか。
「犬と楽しむためのツールとしてシープドッグ・トライアルを始めましたが、とても奥が深い競技です。
たとえば、犬の後ろ姿を見ながら、今自分の犬はどんな表情をしていてどんな気持ちなのかを、想像したり……。犬の気持ちを理解する感性を磨きつつ、犬に意図を的確に伝える技術を磨くことにも力を注いできました。私は元来のセンスではなく、努力でそれを身に着けた感じですね(笑)。その結果、ハンドラーがあきらめなければ、犬は答えを出してくれると思えるようになりました。
犬の判断にまかせるシーンが多く、犬との深い信頼関係を築けるのが牧羊犬作業の魅力ですね」
このように、わかばちゃんの飼い主さんは語ります。
目指すは遠隔操作
工藤さんによると、羊を追いたいという本能的な欲求を、すべてのボーダー・コリーが最初から持っているわけではないそうです。
「初回から牧羊犬の本能が開花する犬もいますが、5回目くらいまでにほとんどの犬で羊を追いたいという本能が目覚める感じですね。
トレーニングの進行度合いは個体差があるものの、50~60回ほど練習を重ねれば遠隔操作ができるようになります」とのこと。
遠隔操作や高度なテクニックで、犬と呼吸を合わせながらの牧羊犬作業は、見る者に感動すら与えます。
「犬に教える内容がレベルアップすればするほど、犬の集中力や意識が高まるのも感じられることでしょう。その時、きっとハンドラーである飼い主さんと犬とのつながりが深くなっていることも感じられるはずです。それが、シープドッグ・トライアルの醍醐味だと思いますね」(工藤さん)
犬が本能を活かして生き生きと輝く作業をつうじて、犬の判断を信頼しながら犬と一心同体になれる競技が、シープドッグ・トライアルと言えるのではないでしょうか。
文・写真:臼井京音
■ 工藤悟さん
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