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2023.09.11

ドイツの街角から ~保護犬を、そっと支える『パーテンシャフト(Patenschaft)』~

ドイツの街角から ~保護犬を、そっと支える『パーテンシャフト(Patenschaft)』~

*1 pochinski: スペインのマジョルカ島で保護され、家族になった犬と現在ドイツで暮らす旅行&ファッションライター。趣味は犬の絵を描くこと、犬の首輪や冬用のセーターを作ること、たまに犬の手作り食やケーキ作りも。犬と暮らす日常のひとコマを不定期にお届けします。

先日、ラジオのニュースを聞いていると、「いま、ティアハイム(アニマルシェルター)が苦境に立っている」という話題が流れてきました。
コロナ禍の最中は犬を飼う人が増え、人気の高い犬種などは迎え入れるまでに何カ月も待たなければならないほどでした。
ですが、コロナ禍が去った今、ティアハイムに届けられる犬の数が膨れ上がっているうえ、光熱費をはじめとする物価が高騰し、運営が厳しくなっているのです。

散歩の途中、こんな壁画を見つけました。フレンチブルを抱える女の子の絵に、「あなたがいるから頑張れる」というような言葉が添えられて。

散歩の途中、こんな壁画を見つけました。フレンチブルを抱える女の子の絵に、「あなたがいるから頑張れる」というような言葉が添えられて。

別のニュースによると、ティアハイムのような施設や役割は社会にとって欠かせない存在である、との認識から、公的な経済的支援に向けた動きも出ているのだとか。
保護動物たちを受け入れるティアハイムが社会に必要不可欠だとは残念で悲しいことです。
一方で、動物のために力を尽くしている人々がいて、ティアハイムの活動に対する支援の道が用意されていることには希望が持てます。

そうした支援方法の1つとして、ドイツには「パーテンシャフト」と呼ばれるシステムがあります。
パーテンシャフトとは、「犬や猫は好きだけれど、うちでは飼えない」という人などが、ティアハイムで暮らしている動物に対して支援金を提供するシステムです。
動物の食事や飼育、医療などに必要な費用を集める目的で、ティアハイムの多くがパーテンシャフトを採用しています。

DOG's TALK

POCHIスタッフの補足

POCHIスタッフの補足

パーテンシャフト(Patenschaft)のもともとの意味としては、Pate/Patinとは、英語でいうとGodfather/Godmotherという言葉にあたり、日本語だと教父母とか名付け親といった意味で、具体的にはキリスト教における洗礼の場に立ち会った人のことを指します。
一部のキリスト教圏では、子供が洗礼を受けた際の立会人がその子供の後見人や保証人になるという文化があるそうです。
この文化をもとに、ドイツでは身寄りのない子どもや動物を支援する制度や支援者をパーテンシャフト(Patenschaft)と呼ぶことが定着しています。

ティアハイムのウェブサイトの一部。保護され、パトロンを探している犬たちを紹介しています。

ティアハイムのウェブサイトの一部。保護され、パトロンを探している犬たちを紹介しています。

支援する人、いわゆるパトロンになりたい人は、インターネットでパーテンシャフトを採用しているティアハイムを探すことが一般的かもしれません。
ティアハイムのウェブサイトには、パトロンを募集している動物たちの年齢や健康状態、性格、ティアハイムに保護された背景などが写真と共に掲載されており、そうした情報をもとに自分が援助したいと思う1頭、または複数頭を選ぶことができます。
パーテンシャフトを申請して認められると、月々一定額の支援金を送ることとなります。

ちなみに、パトロンができた犬は「パーテンフンド」と呼ばれます。
パトロンとパーテンフンドはインターネット上だけの関係にとどまらず、パトロンがティアハイムに実際に足を運べば、パーテンフンドと触れ合うこともできます。
ただし、支援している動物に引き取り主が現れると、パトロンの役目は終わります。
パトロンとしては寂しさ半分、嬉しさ半分というところでしょうか。
とはいえ、犬にとっては喜ばしいことであり、幸せな気持ちで送り出すのでしょうね。

散歩中に見かける犬たちの中にも、パーテンシャフトに支援され、新しい家を見つけた子もいるのかもしれません。

散歩中に見かける犬たちの中にも、パーテンシャフトに支援され、新しい家を見つけた子もいるのかもしれません。