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2024.03.13

働く犬のリタイアメントライフを応援!ワーキングドッグに特化した保護団体とは?~南半球のDog's letter~

働く犬のリタイアメントライフを応援!ワーキングドッグに特化した保護団体とは?~南半球のDog's letter~

世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?共通してる?目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。

"羊の国"なんて呼ばれることもある、ニュージーランド。その理由は人間よりもずっとたくさんの羊が暮らしているほど、牧畜が盛んだからです。
ニュージーランドでは、現在でも牧場の働き手として牧羊犬たちが大活躍中。
頭を使い、体を使い、羊たちをまとめ誘導していく牧羊犬のお仕事はとってもハード。
そんなお仕事を卒業して、新たなステージへと向かう引退牧羊犬たちを支援する団体も存在しているのだとか。

今回は、牧羊犬としての第一線を退いた犬たちの、そのあとのおはなしです。

DOG's TALK

この記事を書いた人:グルービー美子

この記事を書いた人:グルービー美子

ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。

約20万頭の牧羊犬が働くニュージーランド

向かって左がハンタウェイ、右がヘディングドッグです

向かって左がハンタウェイ、右がヘディングドッグです

ニュージーランドではさまざまな分野でワーキングドッグが活躍しています。
そして、その大半は牧場で作業するファームドッグ(牧羊・牧畜犬)。
酪農大国ニュージーランドには現在およそ2500万頭の羊がおり、牧羊犬の数は約20万頭に上るそうです。

この国で働く牧羊犬の種類は、主にハンタウェイとヘディングドッグ(どちらもニュージーランド原産の牧羊犬種)です。
生まれ持った本能と優れた身体能力、さらに訓練によって得た技術を生かして意欲的に働く犬たちも、いずれは年を取り、引退する日がやってきます。
リタイア後のワーキングドッグたちはどのような余生を過ごすのでしょうか。
働く犬に特化した保護団体「リタイアド・ワーキングドッグスNZ」で話を聞いてきました。

シニア牧羊犬との出会いが設立のきっかけ

賢く、エネルギッシュな牧羊犬たちも、老化やケガには勝てません。仕事ができなくなった子達も多く存在します

賢く、エネルギッシュな牧羊犬たちも、老化やケガには勝てません。仕事ができなくなった子達も多く存在します

リタイアド・ワーキングドッグスNZが設立されたのは2012年。
ウェリントン郊外パハイアトゥーアで動物看護士をしていたナタリー・スミスさんが中心となって立ち上げたチャリティ団体です。

「当時勤めていた動物病院で12歳の牧羊犬トッドと出合ったのが設立のきっかけです。トッドは安楽死のために病院に持ち込まれたのですが、彼をひと目見た瞬間に“この子はまだこの世を去る準備ができていない”と感じ、自宅に連れ帰ってしまいました」

ナタリーさんはそれを機に引退したワーキングドッグたちが第2の犬生をおくれるよう、地元の獣医師や動物看護士と協力して保護活動をスタート。
ちなみにトッドはその後、ナタリーさんのもとで17歳まで生きたそうです。
「10年ほど前まで、働けなくなった牧羊犬は、残念なことですが安楽死が一般的でした。今はそれに比べると状況は劇的に改善され、里親のもとで余生を過ごす犬たちが増えました」

それぞれの犬に合う第2のステージを用意

犬の性格はそれぞれ。キビキビ仕事をこなすより、のんびり家族と過ごす方が好きな子だっています

犬の性格はそれぞれ。キビキビ仕事をこなすより、のんびり家族と過ごす方が好きな子だっています

リタイアド・ワーキングドッグスNZは、年間約300頭のワーキングドッグを新しい家族のもとへ送り出しています。
同団体の広報を務めるジョージアさんによると、保護対象となるのはシニア犬だけでなく、牧場で働くには向いていないと判断された若い犬も少なくないのだとか。

「のんびり屋であまり仕事に意欲がなかったり、大規模な牧場で忙しく働くプレッシャーに耐えられなかったりする若い犬もいます。こうした犬たちは基本的なコマンドを理解できるし頭もよいので素晴らしい家庭犬になる資質を備えています」

元気で若い引退牧羊犬たちは、常にワクワク・新鮮な体験や十分な運動を求めています

元気で若い引退牧羊犬たちは、常にワクワク・新鮮な体験や十分な運動を求めています


ただし、牧羊犬として訓練された経緯から、十分な運動量や刺激を与えないと問題行動を起こすようになる場合もあるとか。
そのため、若い犬はライフスタイルファーマー(副収入や趣味の一環としてファームを所有する人)など、アウトドア好きでアクティブな暮らしをする人に迎えられることが多いそうです。

「また、年齢を重ねてこれまでと同じように作業ができなくなっても、仕事を続けたいと考える犬もいます。そうしたシニア犬たちには中~小規模の牧場でゆったりしたペースで仕事をしてもらいます。もちろん、完全に引退して家庭犬になるのを厭わない犬もいるので、それぞれの犬の性格や向き・不向きを考えて里親を探すのが私たちの役割です」

ケガを受け入れて家庭犬に転身した犬

ジョージアさんに最近印象に残った元ワーキングドッグについて尋ねたところ、フェイのことを話してくれました。

「フェイは私たちの団体のボランティアが保護してきた子で、まさに生粋の牧羊犬といった感じの犬でした。十字靱帯を切断して働けなくなったと連絡があり、引き取りに行った時、彼女は涙を流していたのです。ああ、この子は本当に牧場が好きで離れたくないんだなと思いました」

ケガの治療とリハビリを経て、ケータリング業を営む夫婦に迎えられたフェイ。
今でも犬の鳴き声や口笛を聞くと目を輝かせるそうですが、家庭犬としての暮らしにも徐々に慣れてきた様子。
ビーチで遊んだり、調理で余ったサーモンやステーキの欠片をおやつにもらったりして楽しんでいるとのことです。

この国の産業に欠かせない存在であるワーキングドッグ。人間のために懸命に働いてきた彼らが最期まで幸せに暮らせるよう、リタイアド・ワーキングドッグスNZは力を尽くしています。

ケガを経て牧羊犬のキャリアを引退したFaye(フェイ)。彼女のこれからにたくさんの「幸せ」がありますように。

ケガを経て牧羊犬のキャリアを引退したFaye(フェイ)。彼女のこれからにたくさんの「幸せ」がありますように。