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2023.01.30
羊の国で大活躍!牧羊犬との暮らしとは?~南半球のDog's letter~
世界の様々な地域に順応して、暮らしている犬たち。ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?共通してる?目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。
今回は、ニュージーランドに多く暮らす「牧羊犬」についてご紹介いたします。
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この記事を書いた人:グルービー美子
ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。
羊毛大国で不可欠な羊飼いのパートナー
ニュージーランドといえば羊を思い浮かべる人も多いでしょう。1980年代をピークに数を減らしているものの、羊毛はこの国の重要な産業のひとつ。現在でも約500万の人口に対して約2500万頭の羊がおり、1人当たりの数は5頭程度にも上ります。
そんな羊の国で牧羊犬は不可欠な存在。ファームで犬たちがどのような暮らしをしているのかを知るべく、北島中央部ロトルアの牧場アグロドームを取材してきました。
12頭の牧羊犬が暮らす牧場、アグロドーム
アグロドームは26種の羊を筆頭に、アルパカ、牛、ヤギといったさまざまなファームアニマルと触れ合える人気の観光スポット。羊の毛刈りショーや牧羊犬のデモンストレーションなどが行われ、牧場としても運営されています。
アグロドームに在籍する牧羊犬の種類は、この国でおなじみのハンタウェイとヘディングドッグ。どちらもニュージーランド原産の牧羊犬種です。
スタッフのマイジーさんに話を聞いたところ、ハンタウェイは1頭で約3000頭、ヘディングドッグは約1000頭の羊をコントロールできるのだとか。
ハンタウェイは吠えて羊の群れを追い立て、ヘディングドッグはにらみを利かせて羊を誘導するのが役目。
アグロドームではその両方の能力を有し、通称「ハンディ・ドッグ(便利な犬)」と呼ばれるハンタウェイとヘディングドッグのミックスも飼育。生後10カ月から12歳まで、全12頭の牧羊犬が働いています。
牧羊犬のルーティーンとは
アグロドームで暮らす牧羊犬たちの1日は、早朝の運動からスタートします。牧場のオープン前に犬舎を出て場内を駆け回り、その後は必要に応じて羊の群れをひとつのパドック(放牧場)から別のパドックへと移動させる業務を行います。
この時にメインで作業するのはハンタウェイだそうです。
牧場がオープンするとショーに出演。羊たちを室内のステージへと集めるほか、屋外の小さなパドックで羊の進む方向をコントロールして囲いに入れるデモンストレーションもします。
ショーは見応えたっぷり。好き勝手に動き回りそうになる羊たちの先回りをし、素早くまとめる犬たちの機敏さと賢さに感心するばかりでした。
ショーが終わると再び場内で運動したりお昼寝したり。夕方には犬舎に戻り、夕食を食べて就寝です。
「アグロドームの牧羊犬は一般的なファームより作業量が少ないこともあり、仕事の時以外はリラックスしていることが多いかもしれません」と話すマイジーさん。
牧羊犬の引退年齢は平均8歳ですが、アグロドームではそれよりも長く働く犬が少なくないとか。
引退後はスタッフやその友人宅に引き取られ、ペットとしてのんびりとした余生を過ごします。
牧羊犬になるための訓練
立派な牧羊犬になるためには、訓練が欠かせません。マイジーさんに尋ねたところ、アグロドームでは生後6カ月から訓練を始め、2歳までに完了するそうです。
「はじめはリードをつけて、先輩牧羊犬の仕事ぶりを見せて覚えさせます。コマンドはまず声で行い、慣れてきたら犬笛に切り替え。それができるようになったらリードを外して実践。少しずつ作業量を増やしていき、一人前の牧羊犬になります」
牧場はファーマーと牧羊犬の共同プロジェクト。きびきびと作業をこなす牧羊犬は凛々しく、仕事に誇りを持っているように感じられました。最近はドローンを使うファームも増えているようですが、人との信頼関係に裏打ちされた牧羊犬は、今後も現場で活躍することでしょう。
今回訪れた牧羊犬が活躍する牧場
*1 Agrodome