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2024.08.26
国民の安全を守る!NZの警察犬のお仕事とは?~南半球のDog's letter~
世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?!共通してるかも?!と思える目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。
たくさんの働く犬たちが活躍しているニュージーランドでは牧羊犬などのほかにも、日本でなじみ深い「お仕事」をしている犬たちがたくさんいます。
今回ご紹介するのは、ニュージーランドで活躍する警察犬たち。実は、ニュージーランドは台風などの自然災害も多く、豊かな自然の中で行方不明になってしまう人も多いことから、警察犬たちの活躍する場面が多いのだとか。
世界的にも有名な自然の中で活躍する警察犬たちが誕生する施設についてご紹介いたします。
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この記事を書いた人:グルービー美子
ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。
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ドイツ発祥の警察犬
市民の暮らしを守るために働く警察犬。
世界で初めて犬を警察活動に利用したのはドイツで、1896年のことといわれています。
ニュージーランドでは1956年に導入された警察犬は、どのように働いているのでしょうか。
ニュージーランド警察犬課のマネージャーであるトッド・サウソールさんに話を伺いました。
NZ全国で140頭が活躍中!
「ニュージーランドで働く警察犬は現在140頭。
そのうち130頭がパトロール犬で、残りの10頭が麻薬や銃器、通関の探知犬です。訓練中および訓練を控えた子犬も100頭います」
そう話すトッドさんの勤務先は首都ウェリントン郊外アッパーハットにある警察直轄の警察犬トレーニングセンター。
全警察犬はここで生まれ育ち、必要な訓練を受けるそう。
パトロール犬はすべてジャーマン・シェパードで、探知犬にはラブラドールやイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルなども含まれます。
警察犬トレーニングセンターの訓練の質は海外でも広く認められており、卒業後、フィジーやトンガといった近隣諸国で働く警察犬もいるのだとか。
「生まれた子犬は生後8週間で育成のため、普通の家庭に預けられます。預け先はほとんど警察関係者の家庭ですが、一般市民の場合もあります。家庭で基本的なコマンドを覚えさせ、生後7~10カ月になると警察犬トレーニングセンターに戻ります。6段階の訓練と資格取得を経て平均生後18カ月で卒業し、任務に就きます」
ただし、警察犬トレーニングセンターの訓練に進める子犬は全体の6割程度。家庭にいる間もトレーナーが随時子犬の様子をチェックし、あまり意欲的でなかったり、神経質だったりすると警察犬に向かないと判断され、候補から外されることに。その場合は里親のもとで家庭犬となるそうです。
追跡や捜索・救助が主な仕事
警察犬の大半を占めるパトロール犬の仕事とはどのようなものなのでしょうか。
トッドさんに尋ねたところ、主な業務はニオイから犯人を捜す足跡追及活動と、迷子や行方不明者、遺留品、遺体などを探す捜索・救助活動だそう。
ニュージーランドは人口約500万人の小国ですが、警察犬の出動は年間10万件に上るといいます。
「事件や事故はいつ起こるかわからないので、すべての警察犬はペアを組むハンドラー宅で暮らしています。ハンドラーには警察車両が与えられ、いつでも警察犬と一緒に出動できるよう備えています」
実は台風などの自然災害が多いニュージーランド。また、豊かな自然を活用したレジャーも盛んなため、人の捜索なども警察犬が担うケースが多くなっているのです。
一方、違法なものや危険物を発見する能力を持つ探知犬は、警察のほかに航空保安局、ニュージーランド国防軍などでも活躍しています。
特製ハーネスを装着して業務に励む
警察犬が安全に働けるよう、警察犬課では今年、ニュージーランドで開発された特別なハーネスを取り入れました。
パネル入りの二重構造になっており、刺し傷、擦り傷といった思わぬケガから犬のボディを保護する効果があるそうです。
重量1kg程度なので勤務中にずっと装着していても犬への負担は少なく、動きを妨げることもない画期的なハーネスなのだとか。
「ハーネスにはハンドルが付いており、これを掴むと犬をヘリコプターや車にスムーズに乗せおろしできて便利です。警察の仕事はスピードが重要ですからね」
警察犬の引退年齢は8歳前後。
その後は通常ハンドラー宅やほかの警察スタッフのもとで家庭犬となり、余生を過ごします。
人間のために働く犬はたくさんいますが、危険を顧みず第一線で尽力してくれる警察犬は特別な存在。
安心して暮らせる環境を守ってくれることに感謝です。
*1 取材・写真協力:New Zealand Police Dog Section