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2024.10.10
ペットから家畜まで適用!NZの動物福祉法とは?~南半球のDog's letter~
世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?!共通してるかも?!と思える目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。
日本でも、9月の末に動物愛護週間があり、日本各地でさまざまな動物福祉を考えるきっかけとなるようなイベントが開催されていました。
国内でも少しずつ動物福祉への関心が高まってきていますが、ニュージーランドではより動物福祉の歴史は古く、文化として定着しているのだとか。
その背景には、動物たちと一緒に国を発展させてきた歴史があるようで…?
改めて考えたい、犬やほかの動物たちとの暮らしについて、動物愛護のルールの切り口からご紹介いたします。
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この記事を書いた人:グルービー美子
ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。
1999年に定められた動物福祉法
動物愛護の文化が根付いているニュージーランド。
その背景には、伴侶動物はもちろん、牧羊犬・猟犬などの働く犬や、羊・牛・馬に代表される家畜の数が多く、動物がこの国の暮らしになくてはならない役割を果たしているという現在まで続く歴史があります。
1999年にはベースとなる動物福祉法(アニマルウェルフェア・アクト)が制定され、見直しを経て2015年に法律を強化。
2016年7月には規定(レギュレーション)が公布され、現在も新たな規則が策定・施行されています。
今回は、世界でも厳しいといわれるこの国の動物福祉法がどのようなものなのかを調査してみました。
あらゆる動物を適切に扱うための法律
ニュージーランドの動物福祉法は、犬、猫、馬、牛といった哺乳類から鳥類、爬虫類、両生類、魚類まであらゆる動物が対象。
各動物の身体・健康・本能に基づく行動ニーズを満たし、適切に扱うための法律で、第一産業省(MPI)、動物愛護団体SPCA、警察が共同で施行しています。
動物福祉法の具体的な内容は、①適切かつ十分な食事を与える、②適切かつ十分な水を与える、③適切なシェルター(住まい、小屋、避難所)を用意する、④本来の行動パターン(運動など)を守る、⑤適切な身体の取り扱いをする、⑥ケガや病気の予防および素早い診断と治療を提供する、の6点。
これらに反して不当な扱いや飼育放棄をすることは犯罪に当たると定められています。
犬に適用される規定とは?
動物福祉法では「適切」という言葉がよく使われますが、一体どのような状態が「適切」であるのか判断しにくいかもしれません。
それを具体的に定めたものが先に挙げた規定です。
動物別に細かく設けられており、犬に関する規定を見てみると、犬小屋や首輪、マズル、車に乗せる際のルールおよび犬をつなぎっぱなしにしないこと、断尾・断耳(ドッキング)は禁止などと記載されていました。
また、狼爪の切除が行えるのは獣医師のみで、切除が必要な理由があるときだけ、とも記されています。
ブリーダーや飼い主が美容目的で勝手に行うのは、ニュージーランドでは違法となっています。
規定に反したとの疑いがあると通報され、SPCAと警察が介入捜査することも可能。
規定違反と判断されると、300NZドル(約2万7000円)以上の罰金や懲役刑が科されることもあります。
最低基準と推奨されるベストな行動を知る
動物福祉法には既定のほかにコードと呼ばれる規約も存在します。
規定との違いは、コードは動物を取り扱う上での「最低基準」を示したものということ。
そのため、コードに記載された最低基準を下回ると、犯罪と判断されることがあります
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規定同様、かなり細かく定められており、例えば「食事」の項目では、「犬が極度に太っている場合、獣医師の助言を求め、運動プログラムと食事療法で改善させなくてはならない」とあります。
また、コードには「推奨されるベストな行動例」が併記され、「コード(最低基準)を下回るのは犯罪だが、それを満たすだけではなく、ベストな行動をするのが望ましい」と明記されていました。
動物福祉法は、もともと家畜をメインの対象とし、動物に痛みやストレスを極力与えないようデザインされたもの。
第一産省の情報サイトを見ると犬の部分だけでもかなりのボリュームですが、基本的な規定をまとめたリーフレットが用意されているのでわかりやすく感じました。
動物と接する際に人間がすべきことを指南する動物福祉法。
詳しく調べてみて、命を扱うことの責任を考えるよい機会となりました。