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2024.12.25

自然と共に生きる、NZのオーガニック認証制度とは~南半球のDog's letter~

自然と共に生きる、NZのオーガニック認証制度とは~南半球のDog's letter~

世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?!共通してるかも?!と思える目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。

生産者が有機の基準に基づいて生産したものであることを、第三者機関が証明する。これがオーガニック認証です。
世界的に有機(オーガニック)に対するニーズが高まっていて、食品以外のさまざまな分野にもオーガニック認証を行う機関が存在しています。
豊かな自然が残る国、ニュージーランドではこのオーガニック認証を受けた製品がとても身近……ということで、今回はそんなニュージーランドに存在するオーガニック認証機関についてご紹介いたします。

DOG's TALK

この記事を書いた人:グルービー美子

この記事を書いた人:グルービー美子

ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。

年々規模を拡大するオーガニック市場

オーガニックスーパーマーケットの先駆け的存在であるコモンセンス・オーガニクス。

オーガニックスーパーマーケットの先駆け的存在であるコモンセンス・オーガニクス。

自然志向の人が多いニュージーランドでは、オーガニック製品は身近な存在です。
ごく一般的なスーパーマーケットにもオーガニック専門売り場があり、オーガニック市場は年平均6.4%の成長を続けているとか。
「クリーン、グリーン、ピュア」を国のブランディング・イメージに掲げ、オーガニック産物の輸出額も4億8000万ドル以上(2021/22年)と活発です。
そんなニュージーランドのオーガニックの基準とはどのようなものなのか、オーガニック認証制度について調査してみました。

 

国内に5つの認証機関が存在

左上から「Bio Groのロゴ」「Asure Qualityのロゴ」「Demeterのロゴ」「Organic Farm NZのロゴ」「Hua Parakoraのロゴ」

左上から「Bio Groのロゴ」「Asure Qualityのロゴ」「Demeterのロゴ」「Organic Farm NZのロゴ」「Hua Parakoraのロゴ」

ニュージーランドのオーガニック認証機関はBio Gro、Asure Quality、Demeter、Organic Farm NZ、Hua Parakoraの5つ。その中でBio GroとAure Qualityの2つは有機農業の普及を目的とする国際的な非営利団体IFOAMの認定を獲得し、基準の厳しいアメリカやヨーロッパ、日本、中国など世界の市場アクセスも有しています。

Bio Groは1983年に設立され、現在は850以上のオーガニック生産者とネットワークを結ぶ国内最大の認証機関。
酪農業者から食品メーカー、輸出業者、小売りまで幅広い分野をカバーしており、認証された商品にはBio Groのロゴが記載されます。
ニュージーランドに住んでいる人ならこちらのロゴに見覚えがあるはず。
認知度はニュージーランド一といえるでしょう。

Aure Qualityは政府の所有機関で、主に輸入分野を軸に、約150年の歴史を持っています。
食品の質と安全に関する基準を高く定め、畜産場や園芸施設、水産養殖場などへのオーガニック認証も行っています。

農業大国ならではのオーガニック認証

ハチミツメーカーのTranz Alpineのオーガニッハニー(ラベンダー風味)はBio Groのほかに世界でも基準が厳しいといわれるUSDA(米国農務省)からもオーガニック認証を受けています。

ハチミツメーカーのTranz Alpineのオーガニッハニー(ラベンダー風味)はBio Groのほかに世界でも基準が厳しいといわれるUSDA(米国農務省)からもオーガニック認証を受けています。

Demeterはドイツ生まれのオーガニック認証制度で、有機農法の一つであるバイオダイナミック農法を専門とする機関です。
バイオダイナミック農法は化学肥料や農薬を一切使わず、太陽と月の周期をもとにした農事暦を使用していることが特徴。
土壌を守る持続可能な農法で、一度認証を受けても毎年更新する必要があります。

Demeterに似たニュージーランド発の機関がOrganic Farm NZ。
こちらはDemeterよりもローコストで参加できる地域密着型で、中小規模のファームを対象としています。
オーガニック農法のワークショップを開催するなど教育・啓蒙活動にも積極的。さまざまなオーガニック情報も提供しています。

 

マオリ伝統のオーガニック認証

大手オーガニック食品ブランド、セレス・オーガニクスの味噌。味噌汁はニュージーランドでも人気です。

大手オーガニック食品ブランド、セレス・オーガニクスの味噌。味噌汁はニュージーランドでも人気です。

Hua Parakoraはニュージーランドならではのユニークな認証機関。
自然と共存し、その恵みを大切にしてきた先住民マオリの暮らしを後世に伝えるべく、伝統農法と食品のオーガニック認証を行っています。
マオリには医食同源の考え方があり、Hua Parakoraでは商業的生産者はもちろん、一般の家庭菜園もサポートしています。
会員になると昔から受け継がれてきた伝統農法を学ぶことができますが、マスターするには先祖との結びつき・系譜(whakapapa)、魂・精神(wairua)、意義(Māramatanga)、生命(mauri)、権威・支配・影響力(mana)、自然界(Te Ao Tūroa)という6項目を身につける必要があります。
技術だけではなく、マオリの歴史や精神を理解することも重要といえるでしょう。
Hua Parakoraの認証を得た生産者は国内にとどまらず、ハワイのマオ・オーガニックファームズや台湾など近しい先住民文化を持つ海外にも広がっているそうです。

 

人気のマタカナ・ファーマーズマーケットもオーガニック青空市場として知られています

人気のマタカナ・ファーマーズマーケットもオーガニック青空市場として知られています

ちなみに、ニュージーランドで販売されているドッグフードにはよく「オールナチュラル」という表記が見られます。
原材料を見てみると、確かに天然由来のものが使われていますが、先に挙げた5つの機関からオーガニック認証を受けている商品やブランドは確認できませんでした。
とはいえ、プラスチック製品がどんどん廃止されるなど、環境への意識が年々高まっているのは暮らしていても実感しています。
ほかの大陸から離れている地理的条件も相まって、今後はさらに自然と上手に付き合いながら持続可能性を探っていく方向へと進んでいきそうです。