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2024.01.11
【#大きな犬と】効果ない&NGデンタルケアしてない?正しい歯磨きのススメ!
同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、健康や食事や遊びといった暮らしの情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班)
今回のお役立ち情報デンタルケア(歯磨き)
「石田ようこ犬と猫の歯科クリニック(神奈川県川崎市)」院長の石田陽子獣医師に、デンタルケアについて教えていただきます。実際は、不適切なデンタルケアにより、犬の歯周病を悪化させている飼い主さんが多いとも……。本当に正しいデンタルケア方法を、ぜひマスターしたいものです。
歯磨きをしないと、若齢でも歯周病を発症
犬は人間より歯周病(歯肉炎と歯周炎)になりやすいことが知られています。その理由は、口の中のpHが人とはちがうから。
日々作られ続けている犬の歯垢は、3日放置すると歯石になり始めます。
人は歯石になるまでに3週間ほどかかると言われており、こまめにケアする必要があります。
「3歳以上の犬のおよそ8割が歯周病を発症していると言われています。正しいデンタルケアをして歯周病の原因となる細菌を含む歯垢を取り除くことが、歯周病予防には不可欠です。
正しいデンタルケアとは、歯ブラシを使用した歯磨きのことで、歯と歯の間や歯の溝、歯周ポケットの中の歯垢は、歯ブラシでしか掻き出すことができません。」と、石田ようこ犬と猫の歯科クリニックの石田陽子獣医師。
歯周病が歯肉炎のうちは、治療をすれば口腔内の状態を正常に戻せます。
ところが、歯周組織が破壊される歯周炎にまで進行すると、重症化した場合には目の下や頬に穴が開いて膿が出る、鼻に膿がまわり鼻炎を発症する、下あごの骨が溶けて骨折するなど、その影響は口腔内だけにとどまりません。
また、歯周病菌は心臓病や腎臓病といった内臓疾患の原因のひとつにもなるので、「たかが歯周病」と軽視は禁物です。
間違ったデンタルケア3選
石田獣医師のもとにやってくる犬のなかには、不適切なデンタルケアが原因で歯周病を悪化させているケースも少なくありません。
正しい歯磨き方法を実践する前に、まずは正しい知識を身につけましょう。
NGケア1歯磨きシートでケアし続ける
犬用の歯磨きガーゼや歯磨きシートによるケアでは、歯の表面は拭けても、歯と歯のすき間や歯周ポケットの歯垢を除去できません。
「こんなにうちの子、歯がピカピカでキレイなのに、肉眼では確認できない歯の根元の骨が溶けているなんて……」と、石田獣医師の前で絶句する飼い主さんも多いそうです。
「それだけでなく、シートに付着した食べかすや歯垢を、指でぬぐううちに歯と歯茎の間に押し込んでしまっているケースも。これでは歯周病を悪化させるために歯磨きシートを使用しているようなものなので、歯周炎になっているにも関わらず使用し続けることはおすすめしません」(石田獣医師)
NGケア2歯磨きガムやデンタルケアおもちゃだけでケア
歯磨きガムやデンタルケアができるおもちゃは、歯ブラシの代わりにはなりません。
「それらは、あくまでも補助的なアイテムとして活用するのが良いでしょう。ガムやおもちゃを噛むときに使われる歯は奥歯のごく一部であり、それ以外の歯には全く効果がありませんし、歯の隙間や歯周ポケットの歯垢は、歯ブラシでしか掻き出せないことを覚えておいてくださいね」(石田獣医師)
NGケア3無麻酔の歯石除去
歯周病の最大の原因である歯周ポケット内の歯垢を取り除く時には、痛みを伴うことも多く、麻酔下での適切な治療でなければ安全にかつ確実に取り除けません。
また、歯石の除去後に歯の表面をしっかり研磨しないと、かえって歯垢や歯石が付きやすいザラザラの状態が続く場合もあります。
ここまでの痛くて時間がかかる処置を無麻酔で行うのは大変危険ですし、犬の心も傷つきます。
「実際に、無麻酔の歯石除去だけを続けていたせいで、歯周病が悪化しているケースも多数診てきました。歯の表面は一見キレイでしたが、歯茎の中の見えない部分では顎の骨が失われ、ほとんどの歯を抜くしかない例もあります」(石田獣医師)
無麻酔の歯石除去では、施術中の大けがや死亡例もあるので、行わないようにしましょう。
実践!正しい歯磨きレッスン
歯ブラシを使った歯磨きと一言で言っても、正しい方法で行わなければ、すき間汚れを除去できません。
石田獣医師のレクチャーどおりに歯磨きレッスンを行ってうちの子を歯磨き好きにさせ、歯周病予防に役立てましょう。
準備編
まずは、うちの子を歯磨き好きにさせるアイテムをそろえましょう。
ひとつ目は、おいしい味の歯磨き粉(歯磨きペースト、歯磨きジェル)。歯磨きセットを見たら、飼い主さんのもとへ喜んで駆けつけてくれるようになるために、うちの子好みの歯磨き粉を見つけてください。
もうひとつは、犬専用か人間の幼児用のやわらかめの歯ブラシ。毛が360度生えているタイプは、歯に当たりにくく、頬をブラシで擦って傷つけるケースもあるので、一般的な人間用の形状歯ブラシがベストです。
ハード面だけでなく、ソフト面での準備も万全に!
「歯磨きするよ~♪」「楽しいね~、終わったらごほうびのおやつをあげるね」と、やさしく声をかけながら歯磨きタイムを過ごしましょう。
ステップ1口周りを触る
口に触れることに慣らすのが、ファーストステップ。「いい子~」などとやさしく声をかけながら、口周りをなでましょう。
それができるようになったら、唇を上げます。唇はつまむのではなく、皮膚をずらすイメージで。じっとしていられるように、リラックスできる雰囲気づくりも大切です。
ステップ2歯磨き粉を塗る
唇を押し上げて、歯と歯茎の間に歯磨き粉を塗る練習を。「じょうず、じょうず」などと声をかけながら楽しい雰囲気をつくることも大切。慣れてきたら奥歯も触りましょう。
チキン味など、犬が喜ぶ味の歯磨き粉を用意するのがポイント! お気に入りの歯磨き粉を、最後は歯磨きをさせてくれたご褒美になめさせてあげるのもおすすめです。
ステップ3歯ブラシから歯磨き粉をなめる
歯ブラシから歯磨き粉をなめる練習からスタート。「おいしいね」などと声をかけて。
それができるようになったら、歯磨き粉を歯ブラシで歯に塗ります。
歯ブラシが口の中に入ってくるときは、おいしいものをもらえると認識することで、歯ブラシを受け入れるようになるはず。
ステップ4歯ブラシで歯を磨く
いよいよ、歯ブラシでの歯磨きにステップアップ。正しい方法は、歯ブラシを歯と歯茎のあいだにやさしく当てて小刻みに動かしたのち、歯の溝に沿って、縦、横、斜めと多方向にブラッシング。歯が重なって生えている部分は、横方向にブラシを動かして磨いても、隙間にブラシが入らないため、斜めにブラシを入れる必要があるのです。
上列の歯は、縦方向で歯の付け根(歯肉側)から先端に向かって磨くようにもしましょう。
前歯は、横と縦と隙間を磨きます。
犬歯(牙)も、横、縦、斜めに磨き、縦磨きでは歯の付け根から先端に向かってブラシを動かします。奥歯の溝も、斜めに磨きましょう。
歯の裏側も忘れずに。
下列の犬歯(牙)は唇が密着していますが、唇を指でずらすようにして下げ、歯と歯茎の間を、牙を一周するようにして磨きます。
歯ブラシは基本的にはえんぴつ持ちで。斜め下から斜め上へと動かしましょう。
なお、歯石がもっとも付着しやすいのは、犬歯(牙)と奥の大きな歯です。
歯磨きの際、前歯に歯磨き粉を塗っておくと犬が喜んでなめるので、その間に奥歯を磨くのも裏技のひとつ。
大きな犬が歯磨き好きになって、飼い主さんの膝などに自分の顎をのせてくれるようになるのが理想的です。焦らずじっくり、練習を重ねましょう。
毎日の歯磨きでも歯周病になる?初期症状は?
前述のとおり、犬の歯垢はおよそ3日後には歯石になります。歯石そのものは歯周病の直接的な原因ではありませんが、歯石があるとすき間みがきがうまく行かず、歯周病の悪化要因となります。そのため、歯磨きは理想的には1日1回、最低でも1日置きには行いましょう。
けれども、どんなに飼い主さんが頑張っても、加齢に伴って多少の歯石は形成されてくるもの。歯磨きの際には、歯周病のサインを見逃さないようにして、異常を見つけたら早めに動物病院に相談するのも重要です。
■ 歯周病のサイン
・歯磨きを拒否するようになった
・食べづらそうにしている
・口臭がする
・よく舌をペロペロする
・あごを細かくカチカチさせる
・よだれが増えた
・今まで好きだった食べ物を食べなくなった
・おもちゃで遊ばなくなった
・くしゃみや鼻水の症状がある
・目ヤニや涙が増えた
歯周病の治療に関する誤解と、最新の治療法
もし歯周病であるとわかったら、獣医師と相談のうえ、適切な治療を受けることになるでしょう。
「歯周病治療を目的にレントゲンを撮影すると、約3割の犬に想定された箇所以外での病変が見つかると、海外の論文でも発表されています。グラグラ揺れている歯を抜くだけの治療では、足りないんですよね。
なお、当院では、必ず全歯のX線(レントゲン)撮影など精密検査を行い確実な診断を心がけています。サージカルルーペ(拡大率2.5~6倍)やマイクロスコープ(拡大率26倍)を用いて、見逃しのない麻酔下治療を行っています」(石田獣医師)
老犬でも、しっかりと術前検査を実施し対策をとれば、歯周病治療のための全身麻酔は可能とも、石田獣医師は言います。
「治療で抜歯をして歯がなくなると、食べづらそうでかわいそうという声も飼い主さんから聞こえてきますが、もちろん健康な歯ならばあった方が良いですし、抜歯となると、確かに不便ではあるものの、歯周病で歯や骨が痛いよりはずっとマシです。実際に、抜歯後のシニア犬の食欲や活力が増加したケースも、たくさんあるんですよ」
また、歯周病の悪化に伴い自然に歯が抜けるのを待つのは、好ましくありません。
「自然に抜けるということは相当に顎の骨が失われている証拠です。抜けた歯と骨の間には不良肉芽という血行を阻害する肉の塊が入り込んでいることが多く、抜けただけでは骨折のリスクは解消しません。もし歯周病で自然に歯が抜けた場合、歯科を得意とする獣医師に相談を。麻酔をかけて不良肉芽を除去できれば、骨の再生が促進されるでしょう」(石田獣医師)
犬にとって、歯の健康を守ることは心身全体の健康を守ることにもつながります。
正しい知識を得て活かし、うちの子に健やかな毎日を過ごさせてあげたいものです。
ライター:臼井京音 写真:蜂巣文香
取材協力:
*1 石田ようこ犬と猫の歯科クリニック https://yoko-dogdental.com
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石田陽子 先生
石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長。ぬのかわ犬猫病院中田分院(横浜市)院長などを経て、2019年に現クリニックを開院。比較歯科学研究会、日本小動物歯科研究会、日本獣医行動学研究会に所属。日本において小動物歯科の最先端治療を行っているほか、犬専門媒体での取材や監修も多数。
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