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2024.12.09

明るく、前向きに生きていく。バディドッグとして活躍する保護犬たちのお話

明るく、前向きに生きていく。バディドッグとして活躍する保護犬たちのお話

「犬と人間の共生」をテーマに、「今までにないもの、新しいコトに挑む」活動や取り組み、情報をご紹介します。

今回は、前回(犬の働き方は無限大!日本で唯一の"保護犬の犬材派遣会社"で「働く犬」に会ってきました)に引き続き日本で初めて「保護犬の犬材派遣」という取り組みをスタートさせた、Buddies(バディーズ)さんを取材させていただいたときの模様をご紹介します。
前回はBuddiesとしての活動の目標や理念などを中心でしたが、ここでは実際にBuddiesでバディドッグとして活躍する3頭の犬たちのお話をお届けします。

DOG's TALK

POCHI編集部

POCHI編集部

犬との暮らしをちょっと素敵に、快適に。日々、そんな情報集めに余念がない編集チームです。

楽しく活動する、バディドッグたち

Buddiesでは、犬の力を必要とする人や企業の元へ、保護犬を派遣する"犬材派遣"や、週に2回保護犬と一緒にお仕事できる、コワーキングならぬPaw-working(ポー・ワーキング)サービスを展開しています。
とはいえ、バディドッグたちの仕事は、実際に何か特別な訓練を受けた作業のヘルプをするようなものではなく、Buddiesが提供しているのは、人々に保護犬とのふれあいで癒しを得て、心身ともに健康になってもらうこと。

同時に、犬には、派遣活動を通して、「社会化の勉強」「保護犬自身のPR」「自身のずっとの家族を見つける」ことで安心と健康を。環境には、見た目もバックグラウンドもバラバラな保護犬の存在が、街に多様性をもたらすこと。人、犬、環境のそれぞれに良い影響を与える"One Health"を実現することを目標としているのだとか。

その証拠として、バディドッグたちがいる場では、穏やかで人も犬にも笑顔がこぼれ、様々な国の人、さまざまな犬たちが同じように過ごせる、そんな時間と空間ができていました。

今回は、そんなバディドッグたちのお話をご紹介いたします。

アイドルとして活躍する、クマのおはなし

バディドッグたちがいる、Paw-working(ポー・ワーキング)スペースに新しく人がやってくるたびに、嬉しそうに駆け寄っていって挨拶をしにいく人懐っこい、クマ。
フワフワのボリュームある長毛で、ニコニコ人に近寄っていく姿は、私が勝手に抱いていた保護犬のイメージとだいぶ違っていました。
まるで「みんな私のことかわいいって思ってるでしょ?」と言っているかのような、愛されているという自信を感じている子らしい振る舞いに、多くの人が笑顔に。

「クマは、絶対この子がBuddiesのエースになる!って推薦された子なんですよ。ヘッドハンティングのような形でうちに来ました」と寺田さんは笑います。
寺田さんの家にやってきた時から、持ち前の明るい性格であっという間にアイドル的存在に。「その順応力の高さや愛嬌は、Buddiesの活動でも大きな戦力になってくれています。エースになる、という見込みは大当たりでしたね」

天性のアイドル気質ゆえに、ちょっとグイグイ行ってしまうところもあったそうですが、最近はバディドッグとしての活動を通し、少しずつ落ち着きが身について、空気を読んで引いたりすることもできるように。
たくさんの人たちに可愛がられて、精神的にも成長を遂げたクマは、これからも多くの人たちに癒しを届けてくれることでしょう。

お年寄りと子どもが大好きなトビーのおはなし

トビーは小さめの中型犬です。なんだかいつも眠たそうな顔をしていますが、その顔の通りのんびりとした性格をしていて、動きもゆったりしています。
トビーの最大の特長は、小さな子どもやお年寄りが大好きということ。
私たちが寺田さんにお話を聞いている間も、Paw-working(ポー・ワーキング)スペースを訪れていた小さな子どもに対してとても紳士的に接していました。
体を小さく折りたたむようにして寝転がっていたトビーは、子どもの小さな手が体に触れても目を閉じたまま、じっとしています。やがて、そのままお腹がゆっくりと上下し始めたのを見るに、子どもの手が気持ちよくてウトウトしているようです。

「トビーは子どもやお年寄りが本当に好きみたいで。子どもの方から寄ってくることも多いんですよ」そういって目を細める寺田さん。
穏やかなトビーですが、実は飼育放棄にあった過去があるそうです。しかし、今のおっとりとしたトビーの姿からは、そんな事情があるとは思えません。
大人からも、子どもたちからもたくさんの愛情を受けて「毎日とってもハッピーです」という表情をしてスヤスヤ眠るトビーは、「保護犬=かわいそう」というイメージを変える存在なのだと感じました。

ビビりっ子が成長中!ビーのおはなし

Paw-working(ポー・ワーキング)スペースの片隅で、トビーやクマと比べて、ひと際小柄な犬が控えめに座り込んでいました。可愛らしい顔をしたその子は、クマやトビーがいろいろな人に挨拶をしたり、撫でられたりしている間も、人とは一定の距離を保って過ごしています。
「あの子はビー。ビビりが少しずつ良くなってきたところなんです」と寺田さんが紹介してくれました。
ポチのスタッフが少し近づいても、やはり一定の距離をキープしたまま離れていくビー。でも、少しするとチラチラとこちらの様子をうかがう視線を感じます。どうやら初めて見る人間に対する興味は確かにある様子。

「保護されたときもうすでに 成犬だったトビーとは違って、ビーは子犬のころから私たちが育てた子なんです。でも、一番のビビり」笑いながら寺田さんがビーを呼ぶと、嬉しそうに駆け寄ってきます。寺田さんが手に取ったオヤツに気が付くと、表情が変わりました。
同じようにオヤツを見つめたクマよりも小さな体で一生懸命「私も私も!」とアピールする姿からは、それまでの控えめな様子とは違う印象を受けました。 女の子らしい甘え上手な一面も初めての人にはみせない、本当のビーの姿なのでしょうね。 
田舎で放し飼いのようだった母犬が、ある時生んだ子犬のうちの一頭がビーだったそうで、父犬がどんな犬なのかははっきりしていないとか。
子犬のころからビビりな部分はあったそうで、ビーの人に対する反応は性格的なものなのかもしれません。
そんな一面も個性として持ちながら、本当は人間が大好きなビー。信頼できる人(3回以上会いに来てくれた人)に対して見せる甘えん坊な一面を引き出しつつ、上手な過ごし方を探りながら、Buddiesとしての活動を続けているそうです。

たくさんの犬たちがもっと笑顔になれるように

Buddiesで活動するバディドッグたちと接しながら、寺田さんの話を聞いていると「本当にこの子たちは保護犬なのかな?」と思ってしまう瞬間がありました。でも、それは私自身が無意識のうちに保護犬に対して「育てるのが難しい」というイメージが強かったからこそ、なのかもしれません。
でも、保護犬であってもクマのように人懐っこい子、トビーのようなおっとりした子もいるし、ビーのようにビビりな子もいる。犬それぞれの個性が異なっていることは、ペットショップからやってきた子、ブリーダーさんから譲渡された子であっても同じことですよね。たまたま、家にやってくるまでの経緯で「保護された」ということがあったから、保護犬と呼ばれるだけで、同じ犬。ここで過ごしたことで、これまでとは違った柔軟な考え方にアップデートできそうな気がしてきました。

皆さまは「保護犬」と聞いてどんなことをイメージしますか?
私と同じように「ちょっと気難しい」とか「たくさん幸せにしてあげなくちゃ」というイメージがないでしょうか?

近年は少しずつ保護犬出身の犬たちが家庭犬として受け入れられることが多くなってきているそうです。
犬たちを迎える経路の選択肢として、もっともっと保護犬たちが身近になって、街中でも姿を見かけることが増えるといいですね。

おわりに

今回、Buddiesの活動やバディドッグたちへの取材を通じて、印象的だったのは、無意識のうちに私自身の中にあった保護犬に対する「育てるのが難しい」というイメージに気付かされたことでした。
バディドッグたちはそれぞれの個性を輝かせながら活躍していました。Buddiesとしての活動も、強制されているという印象もなく、バディドッグたちがそれぞれ「自分らしく」振舞っているというものでした。つまり、その子がその子として自分を見せること自体が、心の豊かさにつながるお仕事になっていたのです。

のびのびと過ごす姿をみて、一頭一頭の犬たちの個性を尊重し、共に生きているのだということを意識することって、改めて大切だなと感じました。
保護犬たちの未来が明るく、前向きなものでありますように。