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2024.12.02

犬と年末年始を一緒に楽しむ食事!そば・おもちを与えるための注意と工夫[管理栄養士が解説]

犬と年末年始を一緒に楽しむ食事!そば・おもちを与えるための注意と工夫[管理栄養士が解説]

年末年始は年越しそばや鏡もち、おせち料理など、行事に合わせて食事の内容を考える方も多いのではないでしょうか。
人用にしっかりとした味付けがされているおせち料理は適さないものの、味を付けていないそばやお餅は、食材としては犬にも与えることができます。

本記事では、犬も一緒に年末年始の食事を楽しみたいと思う飼い主さんのために、そばやおもちの与え方の注意点や工夫をご紹介します。
食品の持つ特長で体調を崩す原因になる可能性もあるため、注意点も参考にしてください。

犬にそば・お餅を与えても大丈夫?

年末年始から食べる機会が増えるおそばやお餅。
これらの食材に関して、原材料からチェックしていっても犬の体調に影響するような成分や中毒の心配は基本的にありません。
ただ、あくまでも人の食べ物であるため、与え方には注意が必要です。
つきたてのお餅をそのまま与えると噛みきることはできませんし、おそばを長いまま与えると丸のみしてしまう可能性があります。

犬の体格やドッグフードの量を考慮し、与えすぎないようにしてください。
また、与える場合は、犬が食べやすいように与え方にひと工夫することをオススメします。

安全に犬にそば・お餅を与えるための工夫

犬におそばを与えるときのポイント

そばは、原材料の一つである「そばの実」に必須アミノ酸のロイシンとリジンや、消化を助けるビタミンB1が豊富に含まれています。
さらに適度な食物繊維も含まれるため、消化性を高めるお腹のサポートも期待できそうですね。
そばは血糖値を上げにくい特徴がある一方で、糖質量はうどんやごはんと同等程度含まれます。

さて、実はそばの実は「穀類」=グレインに含まれないってご存じでしょうか?
穀類を定義する考え方のひとつとして、イネ科の仲間であることがあるのですが、そばの実をつける植物はタデ科という全く別の植物のグループに属しています。そのため、穀類に対してアレルギー反応を示してしまう犬であっても、そばにはアレルギー反応が出ることなく安全に食べることができます。
そばのように、穀類に似た使われ方をする植物でありながら、穀類ではないものを「疑似穀物」と呼び、同じようなものにキヌアやアマランサスなどがあります。

 

■細かく刻んでドッグフードに混ぜる

犬にそばを与える際は、5~10mm程度の長さにカットし、ドッグフードに混ぜ合わせるとよいでしょう。
また、消化に負担をかけないように、規定時間よりも長めに茹で、柔らかい食感に仕上げることがオススメです。
茹でる前に小さく折るか、超小型犬向けでは茹でたあとにフードプロセッサーで小さくカットする方法が適しています。

 

■ガレットにして与える

秋の優しい甘さを楽しむ犬の手作り食レシピ 梨のガレット

秋の優しい甘さを楽しむ犬の手作り食レシピ 梨のガレット

そば粉を活用し、ガレットにして与えるのもおすすめです。
ガレットとはそば粉で作るクレープのような食べ物で、人の場合は野菜やサラダチキン、スモークサーモンなどを挟んで食べることが多いです。
犬に与える際は、そば粉を水で溶いた生地を薄めに焼き、食べやすいように小さくちぎって与えましょう。
焼き上がってすぐは火傷の恐れもあるため、しっかりと冷ましてから与えてください。

 

犬にお餅を与えるときのポイント

お餅は、ごはんと同様に、炭水化物を多く含む食材です。
お餅に含まれる炭水化物は、即効性のエネルギーになる糖質が豊富です。
お餅もお米同様、水を加えて加水調理することにより、でんぷんがアルファ化し、犬も消化吸収しやすい形に変化するのできちんと消化することができますよ。
しかし、注意してほしいのはごはんの米とは異なり、つきたて・焼きたてのお餅はご存じの通り弾力性が高いため、喉にはり付くなど誤嚥のリスクがあることは理解しておきましょう。

お餅が持つ独特の柔らかく伸びるような食感は、もち米に含まれているでんぷんによるものです。ふだん私たち日本人が食べているお米は「うるち米」と呼ばれるものですが、お餅や赤飯、おこわなどに使われるのは「もち米」です。
米に含まれるでんぷんにも種類がいくつかあり、もち米に含まれているでんぷんは「アミノペクチン」というものが約100%です。このアミノペクチンは加水・加熱すると粘り気を出す特長を持っているので、強い粘り気を出すようになるのです。
うるち米の中にもアミノペクチンを含むものがあり、その割合によって粘り気や柔らかさなどの食感に違いが生まれています。

 

■小さくカットして揚げる

犬に安全にお餅を食べさせる方法「お餅のおせんべい」[#犬の手作り食レシピ]

犬に安全にお餅を食べさせる方法「お餅のおせんべい」[#犬の手作り食レシピ]

おもちを犬に与える工夫としては、普段与えているドッグフードやオヤツと近いサイズに出来上がるよう、小さめにカットし、固い状態のお餅を軽く揚げます。
おもちは揚げると膨らむ性質があるため、より小さくカットしてください。
揚げることにより噛み砕きやすくなり、誤嚥のリスクも最小限に抑えられることで犬の嗜好性も高まります。

 

■薄くスライスして焼く

おもちを焼いて水分を少なくすると、犬は食べやすくなります。
噛み砕きやすいように、2~3mm程度に薄くスライスすることがポイントです。
噛むことが苦手な犬に与える際は、一口で食べられる大きさに割ってから与えるのもよいでしょう。

犬におそばやお餅を食べさせる時の注意点

そばやおもちは犬が食べても問題ない食材ですが、与える際にはいくつかの注意点もあります。

 

■始めて食べさせる時は慎重に

どんな食べ物でも同じですが、初めて食べさせる時は慎重に判断するようにしてください。最初に与えるのは少量のみにし、体調に変化がないか数時間様子を観察するようにしましょう。

犬の体質によっては、お腹の調子を崩してしまったり、食べ方が分からなかったりすることもあります。
また、食物アレルギーを心配される方も多いと思います。すでにそば粉、小麦粉、米にアレルギー反応が見られることが分かっている場合は避けてください。
ただし、アレルギーは繰り返し接触したり食べている食物ほど発生リスクは高くなりますので、初めて食べさせる場合にはアレルギー反応が見られることはあまりありません。

 

■主食にしない

人にとって、そばやおもちは主食になる食材ですが、犬に与える際はお楽しみや気分転換として、あくまでもおやつとして与えるのがいいですね。
ドッグフードと一緒に与えるときは、ドッグフードの量をいつもより10%程度減らし、トッピングします。
犬のおやつを与える目安量は、必要なカロリーの10~20%が適切であるとされています。与えすぎは肥満や病気の原因になるため注意してください。

 

■味付けはしない

犬にそばやおもちを与える際は、味付けの必要がありません。
人が食べるときと同様に醤油や砂糖などを加えると、塩分や糖質の過剰摂取につながります。

まとめ

年末年始に人がよく食べるそばやおもちは、食材としては犬が食べても問題ありませんが、食品の特長から注意も必要です。
さまざまな栄養素が含まれますが、糖質が多く含まれる食材なため、与えすぎたり、粘度がある状態のまま与えるのはオススメできません。

犬と一緒に年末年始の食べ物を楽しみたい飼い主さんは、与える量や与え方にはよく注意しましょう。

ペット栄養管理士・管理栄養士:村瀬由真

*1 4年制大学の管理栄養学科を卒業。食事と栄養の知識を活用し、動物病院や給食委託会社での勤務を経験。現在はチワワや猫たちと一緒に暮らすライター