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2025.03.24
Dog Snapshot R 令和の犬景Vol.48 春近し、されど雪遊び

写真・文 内村コースケ
犬は太古より人類と一緒に歩んできました。令和の世でも、私たちの暮らしにさまざまな形で犬たちが溶け込んでいます。このフォトエッセイでは、犬がいる情景を通じて犬と暮らす我々の「今」を緩やかに見つめていきます。
2月のまとまった降雪で大雪原へ

昨年も同じことを書きましたが、近年は冬本番のイメージが強い12月・1月より、2月・3月の積雪が多い印象です。僕の生活圏である長野県東信地方・諏訪地方でも、2月上旬にまとまった雪が降り、山間部のスキー場などでは十分な雪に恵まれました。
同じ長野県の北部や日本海側の北陸・東北地方では記録的な大雪となり、地元の方々は大変な思いをされました。そのため、雪が積もったと喜んでばかりはいられないのですが、犬と自然の中で暮らすために都会から移住してきた者としては、やっぱり雪が多い冬はワクワクします。
我が家のルカ(アイメイト=公益財団法人アイメイト協会出身の盲導犬の不適格犬)にとっては、今年は2回目の信州の冬でした。昨年は初めての雪に少し戸惑って片っ端から食べたり舐めたりしていましたが、だいぶ慣れてきた今年は、スノーシューなど本格的な雪のアクティビティを一緒に楽しみました。


数少ないドッグフレンドリーな山へ


雪遊びに限ったことではないのですが、日本国内で犬とのアクティビティを楽しむにあたっては、「ペット禁止」の壁が立ちはだかるのは残念です。市街地の公園のみならず、大自然の中にある山でも「野生動物に伝染病が広がる」「高山植物が荒らされる」といった理由で犬が締め出されている山域が結構あります。海水浴場もペット出入り禁止が多いですね。「釣った魚に犬の毛がついていた」といった不思議なクレームに配慮して、それだけが理由ではないですが犬の遊泳を禁止している湖もあります。
もちろん、誰もが納得できる合理的な理由で禁止されている場合も少なくありません。その場合は、我々の側からも、積極的に配慮するべきでしょう。少々納得がいかなくても、犬が嫌いな人、苦手な人の気持ちも尊重しなければなりません。ただ、我が国は欧米諸国などと比べてペットに対する不寛容さが目立つのも事実です。あくまで僕の個人的な印象ですが、根本的な背景として自分たちの“聖域”をペットごときに荒らされたくないという身勝手さも見え隠れしているのではないでしょうか。「犬連れ登山の是非」については、過去に記事化して問題提起したことがありますが、この件だけでも社会全体の理解を得るまでには数十年単位の時間がかかるでしょう。それでも、ペットを愛する人たち、そうでない人たちがお互いに理解し合い、少しずつでも不寛容さが解消すれば良いと思っています。
嘆くばかりではしかたありません。数は少ないですが、ドッグフレンドリーな山や湖は国内にも点在していて、今はそうした場所を選んで存分に楽しむべきでしょう。南アルプス北端の入笠山もその一つで、ルカとは2月中旬に初めて行ってきました。
入笠山山頂手前にある湿原・山野草の花畑、林道・登山道がある一帯へは、ふもとのスキー場からゴンドラリフトで上がることができます。冬季は十分な積雪がありながら登山道・林道がしっかり整備された比較的ゆるやかなエリアなので、冬山初心者でも楽しめます。そして、ゴンドラリフトには大型犬も乗れ、登った先の山域も人が入れる場所は基本ペットOKです。公衆トイレの脇などに、うんちを捨てられるペット専用のゴミ箱もあり、自然環境の保護、一般の登山客との共存をはかる配慮もされています。実際に犬連れ客を多く見かけますし、そうでない登山者も、ここではほとんどの方が犬に対してフレンドリーです。



ふかふかな雪の上を駆け回る喜び



雪が苦手な犬もいますが、ふかふかな雪の上を思い切り駆け回るのが大好きな犬も多いと思います。嬉しそうに飛び跳ねる愛犬の姿を見るのは、飼い主にとっても最高の幸せですね。田舎暮らしをする私たちの周りでも安全に、誰にも迷惑をかけずに駆け回れる場所は少ないのですが、雪がたくさん積もると車や人が来なくなる安全地帯が一気に増えます。それも雪が嬉しい要因の一つですね。




恒例の犬ぞり大会では雪上のドッグマラソンも


そして、今年も、長野県諏訪市の霧ヶ峰高原で開かれた犬ぞりレースの様子を撮影させてもらいました。第1回から3年連続でお邪魔していますが、今年は当初の2倍もの参加があったとのことで、こうした本格的な犬の冬のアクティビティが広まっていることを感じさせます。
そんな中、今大会では初めて、人と犬が一緒に走る「ドッグマラソン」の部門が設けられました。通常は雪がないコースを走る競技ですが、雪を蹴り上げて走る雪上のドッグマラソンは写真映えも良く、撮影者としてもとても楽しめました。何より犬ぞりもドッグマラソンも、人と犬の絆が深まるのが良いですね。皆とても良い表情で楽しんでいました。


春本番を前に
3月に入ると、梅や桜、桃などの花だよりも聞こえてきますが、ここ信州や東北、北海道などでは、もう1、2回、早春のどか雪が降るのがここ何年かの恒例です。春の雪は湿っていて重たいので、雪かきも大変。スリップ事故も起きやすく危険です。だから降ってもさっさと溶けてほしいのですが、春本番を前に、もう1度雪景色の中をルカと散歩したいなあ、とも思うのです。


■ 内村コースケ(写真家)
1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒。中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験後、カメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「撮れて書ける」フォトジャーナリストとして、ペット・動物愛護問題、地方移住、海外ニュース、帰国子女教育などをテーマに撮影・執筆活動をしている。特にアイメイト(盲導犬)関係の撮影・取材に力を入れている。ライフワークはモノクロのストリート・スナップ。日本写真家協会(JPS)正会員。本連載でも取り上げたアイメイトのリタイア犬との日々を綴った『リタイア犬日記〜3本脚の元アイメイト(盲導犬)の物語〜』で、大空出版「第5回日本写真絵本大賞」毎日小学生新聞賞受賞。同個展をソニーイメージングギャラリー銀座で開催。
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